louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「企業内教育が役に立たないわけ」 ~ たぶん、ほんとうのこと ~

今回は、”「企業内教育が役に立たないわけ」 ~ たぶん、ほんとうのこと ~ ” というテーマで考えてみます。

企業内教育が役に立たないわけ

企業内教育があまり効果がない、というのは誰も言い出しませんが、悲しいことに事実だと思います。

 

それには多くの原因があり、これまでも個々の原因についてはそれぞれ記してきましたが、少し纏めてみたいと思います。


企業内教育の問題には、学校教育と同じで、


「教える側」(企業)

「学習者」(社員)


の2つの側面があります。


まず、「教える側」(企業)の問題としては、


・教育の体系がない

・教育デザインがない

・経営層の教育に対する認識


といったことが考えられます(勿論、他にもありますが、このことはほとんどの企業にあてはまるのではないかと思っています)。


「教育の体系がない」


というのは、学校教育でいう「学習指導要領」のような体系ほとんどの企業にはないということです。


職種、役職、個人の状況などによって、求められる知識・スキルは違います。それに対しての企業内教育は、非常に”大雑把に ””思いつき ”のように教育を行っています。

稀に、”少しだけ教育や学習の知識を持った人 ”が役員などになると、自分の担当している部門については、職種、役職に必要な知識・スキルの体系や教育内容を明示化させたりもします。

しかし、そういったものは数年後には、何も無かったようにすっかり忘れ去られてしまいます(その役員は、次(上)の立場へのステップを探すことに興味が移り、教育・学習のことなど気にしなくなります)。

 

企業で求められる知識・スキルというのは、学校教育と違って何年も変わらないということはありませんから、体系を作ったとしても毎年、時代や状況によって改定していかなくてはなりません。

それなりの体系を作った企業も、大体は1~2年でその改定をやめてしまいます

 

新しい製品やトレンド、社会や会社の情勢等によって、社員に求められる知識・スキルもあっという間に変わってしまいますから、体系の改定が大変なのは事実ですが、学校とは違って、企業においては「教育の構造」を作ることができるのに非常に残念な状況となっています。


「教育デザインがない」


これはこのブログでのメインテーマなので、もう繰り返す必要もないかもしれません。

教育・学習の知識・スキル・思考がある教育担当者がほとんどいない、ということです。

慣習と、思いこみと、学校教育の模倣の教育がほとんどで、スケジュールを組むことがデザイン(設計)だと考えているということです。

一言でいうと、「教育に科学がない」

ということです。


「経営層の教育に対する認識」


これは上記の「教育の体系がない」でも記しましたが、基本的に企業の経営層は、「社員の教育・学習」の知識がないだけでなく、”関心がない ”ということです。

体裁のために「人材育成」や「リスキリング」などと多くの経営者が口にしますが、誰も本気で「教育・学習」を考えませんし、学びません。

以前、”CLO(Chief Learning Officer)がいない日本企業に伸び代はない! ” にも記しましたが、ほとんどの日本の企業には「CLO(Chief Learning Officer)」というポジションがありません。

CLO がいないのだから、企業において教育が真剣に考えられることはありません。

 

企業では、ボトムアップで大きな変革がもたらされることはあまりありませんから、経営層が言及しない限り社員は動きません。

それ故、「教育の体系」も「教育デザイン」もできないのです。


次に、「学習者」(社員)の問題です。


・学ぶ意欲がない(できなくてもいい)


これは、学校を出て社会人になった人の多くに当てはまりますね?

「これまで学校で散々勉強してきたんだから、社会人になってまで学びたくない」

という心理は誰にもあることです。

将来、外国に行って働きたい、、などという願望のある人は英語を学んだりしますが、新人の頃を除いて、業務に有用な知識・スキルを自ら進んで学ぶ人は少ないと思います。

その知識・スキルがあれば業務に有用だとわかってはいても、「学ぶ意欲がない」のです。

 

「学ぶ」最初の段階では、インセンティブ等の ”外発的動機づけ ”が必要になりますが、企業においては「学ぶこと」にインセンティブを与えることはしません

インセンティブが社員に与えられるのは、あくまで業務で成果を上げた後になります(もしくは年齢を重ねる、、、)。

 

これでは、「学ぶ意欲」など生まれるはずがありませんし、学習の継続など望むことはできません。

業務時間内の教育や研修を”休み時間 ” のように考えている人も多いと思いますし、”時間のムダ ” だと受け取っている人も少なからずいます。

 

これは、「企業内教育が役に立たない」と考えていることと、怠惰さ」による作用です。

 

いい加減な「教育デザイン」での教育、研修、いつ使うか理解できない種類のリテラシー教育、、、知識・スキルを習得できなくても、その時間だけを過ごせば「教育を受けた」と認定される愚かな仕組み、、、、

 

ではどうすればいいでしょう?

 

これも何度か記した極論ですが、「学ぶ意欲がなくてもインストラクションの内容を習得させる」しかありません。

もしくは、企業内教育など完全にやめてしまうか、、かのどちらかです。


現実的には、「学ぶ意欲がなくてもインストラクションの内容を習得させる」方略を考えるしかありませんね?

それにはこれも前に記しましたが、企業内教育での学習を ”仕事 ”とする「学習契約(learning contract)」をすることです。

 

本当は、インセンティブを与えて学ばせればいいのですが、インセンティブを与えられない状況の場合は、「学習契約」により「インストラクションの内容を習得できなかった場合」の条件を決めることです。


このようなことを書くと、

「いや、うちの会社の教育はAI導入してるから素晴らしい!」

とか、

「教育なんてやってるフリでいいんだよ!」

とか、

「学校教育の模倣で何が悪い?」


などという人が出てくるのですが、これまで多くの企業の教育担当者と交流を持ってきましたが、ただの一社も、よく考えられて、教育が業績の役にたっているなぁ、、と認識した会社はありません。


講演会や論文等では、「多くの企業の教育を変えた!」 とか、「教育で企業が変わった」、、、などというのを見聞きしてきました。今も毎年そのような発表がいくつも行われていますし、教育の専門家(らしい人たち?)が集まったシンポジウムなどもあります。

 

しかしです、

 

何か企業内教育は変わったでしょうか?