今回は、 ”「インストラクションの限界」と「インストラクショナルデザインの限界」の誤謬 ” というテーマで考えてみます。
論理的で合理的な教授システム理論(?)である「インストラクショナルデザイン(ID)」が ” 世の中に受け入れられなかった原因 ” については、これまでも何度か考えてきました。
・拡散方略の失策(宣伝効果)
・理論と実践の融合失敗(アカデミアと現場の違い)
・浅い(誤った)知識での実施
等に加えて、
「インストラクションの限界」と「インストラクショナルデザインの限界」を誤謬してしまっている
ということが考えられます。
つまり、1つ1つのインストラクションの ” 成果の限界 ” を、インストラクショナルデザインの ” 成果の限界 ” と捉えてしまい、
” インストラクショナルデザインには限界がある ”
という誤謬が世の中に蔓延してしまったことです。
一時期、” e-Learning 業者 ” ” 教育コンサル業者 ”の間で、
「インストラクショナルデザインには限界があって、もっとクリエイティブな方略を取るべきです!」
などという戯言が流行り、
「これからの時代にはAIによる教育が主流になります、、、」
というようなコトバが飛び交いました。
これには原因がありました。
このようなコトを言い出した ” e-Learning 業者 ” ” 教育コンサル業者 ” も最初は「インストラクショナルデザイン」に飛びつきました。
何にでもダボハゼのように食いつくのがこういった業者に共通の特性です。
とにかく、熊大に大森先生や鈴木先生のご尽力で ” 教授システム学専攻 ” の大学院ができ、「インストラクショナルデザイン」が少しずつ知られるようになってきた頃、このような業者は有識者を招いて講演をやったり、自分たちでも鈴木先生や向後先生の書籍などを読んで学ぼうとしました。
そして、顧客にも「インストラクショナルデザイン」をサービスとして売り込もうとしました。
しかし、そんな ” 付け焼き刃 ” の浅い知識が功を奏すわけもなく、成果を出せずに、顧客からは「 NO ! 」を突き付けられました。
それから、” e-Learning 業者 ” ” 教育コンサル業者 ” による
が始まりました。
彼らは、様々な会合や打ち合わせで、それまで商売のネタにしようとしていた「インストラクショナルデザイン」を否定して回りました。
そういった場面で最もよく使われたセリフが、
「インストラクショナルデザインの限界」
です。
しかし、この「インストラクショナルデザインの限界」というのは、このような浅い知識の人々が「インストラクションの限界」と誤謬していたためです。
各インストラクションには、それぞれ ” 学習成果の限界 ” というか、学習目標、ゴールがあります。
例えば、
「Aという命題考えるために、BとCの関係性を明確にする」というような授業、インストラクションがあったとします。
このような知識の習得を目標とするインストラクションが最も多いはずですが、このインストラクションの学習成果は、カークパトリックの基準でいえば、当然 ” レベル2 ” の ” 学習 ” になります。
カークパトリックの4段階評価
レベル1:反応(Reaction)
レベル2:学習(Learning)
レベル3:行動(Behavior)
レベル4:業績(Result)
ここで、アカデミアで仕入れた情報(レベル4の「業績」を目指すのは難しいので、通常はレベル3の「行動変容」を、、、)を勘違いして認識し、
「インストラクショナルデザインを導入したのに、レベル2しか成果が出ないではないか!」
「インストラクショナルデザインは事後テストをしてレベル2までしかムリ」
となり、
「インストラクショナルデザインの限界」
などと呟いたわけです。
いやいや、それは「その1つのインストラクションの成果」ですから、、
ということが理解できません。
これまで、このような業者や教育担当者に数多く遭遇してきました。
人は一度思いこむと、なかなかその考えを変えることはありません。
さらに、そういった人たちの中には、” e-Learning 業者 ” ” 教育コンサル業者 ” の経営者や役員なども多く、、、彼らの「誤謬」が瞬く間に広がっていきました。そして、彼らがその認識を改めることは今後もないでしょうから、非常に厄介なのです、、、。
今一度考えてみてください、
「インストラクションに限界は確かにある」
が、
「インストラクショナルデザインに限界などありません」
冷静に、論理的に考えれば、子供でもわかることが、いい大人にわからないのです、、、、。