今回は、”「ポスト真実(post-truth)」と「ポストコロナ(post-corona)」 ~ 教育・学習への影響 ~ ” ということについて少し考えてみます。

「ポスト真実(post-truth)」と「ポストコロナ(post-corona)」というコトバは、ともにポスト(post)が頭についていますが、多少その意味合いは違います。
そして、それより「ポスト真実(post-truth)」は現実にある事象をそのまま表現したコトバですが、「ポストコロナ(post-corona)」というのは、” こうなるだろう、こうなればいいな、、、” という希望的観測でした。
一般的に「ポスト真実(post-truth)」は政治的、思想的な分野で使われ、「ポストコロナ(post-corona)」は社会的な分野でよく使われました。
「ポストコロナ(post-corona)」はパンデミック期に教育・学習は勿論、企業等での ” 働き方 ” までが大きく変わり、
”「プレコロナ(pre-corona)」のような教育・学習、働き方には二度と戻らないだろう、、”
と専門家に限らず、教育関係者、企業トップまでが公言していました。
しかし、実際には、コロナ禍が過ぎると、その ” 希望的観測 ” はあっさりとハズレ、公言は取り消され、「プレコロナ(pre-corona)」の時代に逆戻りをしました。
学校では皆勤賞が再び褒められ、企業では在宅勤務はムダが多いと、、、” こうなるだろう、こうなればいいな、、、” という希望的観測はあっさりと忘れ去られました。
そして、その「ポストコロナ(post-corona)」を ” 嘘 ” にしてしまったベースに「ポスト真実(post-truth)」があると思うのです。
事実や客観的な証拠よりも感情や個人的な信念が世論や政策決定に強い影響を与える状況を指す言葉。
情報の正確性よりも、いかに感情的に訴えるか、あるいは既存の信念や偏見を強化するかが重要視される。
2016年にオックスフォード英語辞典で「Word of the Year」に選ばれたことでも知られている。背景には、特にソーシャルメディアの普及やフェイクニュースの増加、政治的な分断などが影響している。
ポスト真実の状況では、人々は自分たちの信じたいことを信じ、異なる情報や意見に対しては懐疑的になる傾向がある。
(ポスト真実時代に必要な教育・学習の文脈)
・情報リテラシーの重要性
虚偽情報や偏った情報が容易に拡散されるため、学生に対して情報リテラシーを教えることがますます重要。情報の信頼性を評価し、事実と意見を区別する能力を育むことが重要。
・批判的思考の強化
教育の現場では、学生が批判的思考を持つことの重要性が増し、感情的な訴えやバイアスのかかった情報に惑わされず、客観的な視点から物事を判断する力を身につけることが必要。
・多様な視点の理解
自分と異なる意見や視点を理解し、共感する能力が重要。教育は、異なる文化や背景を持つ人々の考え方を尊重し、多様な視点を受け入れる姿勢を育てる役割を果たす。
ソーシャルメディアやインターネット上の情報源の急増に伴い、学生がメディアリテラシーを持つことが不可欠。どの情報源が信頼できるかを見極め、情報の偏りや意図を理解する能力を養うことが必要。
・教育者の役割
教育者自身も、ポスト真実の影響を受けやすい情報環境の中でどのように教えるかを考える必要があり、自身の知識を更新し、学生に対して適切な情報を提供し、健全な学習環境を維持する責任がある。
・エビデンスに基づく教育
教育プログラムや政策も、エビデンスに基づいたアプローチを採用することが求められ、教育の質を高め、学生が正確な知識を得ることができるようにする。
この ” ポスト真実時代に必要な教育・学習の文脈 ” は、まるで「ポストコロナ(post-corona)」の希望的観測とそっくりではないでしょうか?
教育・学習の専門家や研究者がいかに ” 世間知らず ” で、” 世の中 ” を見ていないかということがよくわかります。とはいえ、そのような文脈が必要だということは正論です。
しかし、
” 劣化した知性の時代における ” 学び ” の考察 ~ 知性から知能へ ~ ” という以前の投稿で、
・人間の「知性」の相対的なレベルがここ数十年で驚くほど下がっている
・これまで人間が「知性」として守ってきた領域やプライド(?)のようなものが確実に崩れてきている
と記しましたが、まさに現在進行形で「人々の知性」は劣化し続けています。
AIや様々なテクノロジーの進化、ロジカルな考え(多様性、ハラスメントの禁止、環境問題等)の共通認識ができそうに思えた瞬間も確かにありましたが、「ポスト真実(post-truth)」の時代は、次の時代に移るのではなく、更に強化されてしまった状況です。
このような悲劇的な状況は「教育・学習」にも確実に悪影響を及ぼします。
「ポストコロナ(post-corona)」が「プレコロナ(pre-corona)」以前の状況であったという事実を突きつけられた現在では、
「教育とは教え、育むこと」
「先生の言うことを聞いていれば大丈夫」
「塾へ通うのはあたりまえ」
「医者になるのが一番いい、もしくはYouTuber」
というような思考がまたもや蔓延しています。
そして、上で挙げた(ポスト真実時代に必要な教育・学習の文脈)、
・情報リテラシーの重要性(×)
・批判的思考の強化(×)
・多様な視点の理解(×)
・メディアリテラシー(×)
・教育者の役割(△)
・エビデンスに基づく教育(×)
の中で、更に強化された「ポスト真実(post-truth)」の時代では、
・教育者の役割(△)
以外に希望が持てる事案は殆ど見つかりません( ” 嘘 ” が ” 事実 ” に勝っているのですから、、、)。
せめて「教育者」だけでも ” 正気 ” を取り戻して、
「教育」とは「学習者」の支援
という真実を思い出してほしいと思うのです。
世の中の流れが、あまりにも悲惨な方向に行っているような気がしたので、今回はかなりネガティブに内容になってしまいました。
気を確かに持たなくては・・・