今回は、「基本的精神能力:Primary Mental Abilities」 について少し考えてみます。

「知能」という定義・概念の話です。
これまでも、いくつかの「知能」に関する考えを記してきました。
・スピアマン(Spearman,C.E. ): 二因子説
・ガードナー(Gardner,H.): 多重知能理論
・キャッテル(Cattel,R.): 結晶性知能・流動性知能
・ギルフォード(Gilford, J.P.): 構造理論・収東的思考・拡散的思考
他にも多くの人が「知能」の定義や概念について論説を提唱しています。
そこで、抜けていた、サーストンの「多因子説」について、見てみます。
(基本的精神能力:Primary Mental Abilities)
ルイス・L・サーストン(Thurstone,L.L.)が提唱
知能は単一の「一般知能(g因子)」ではなく、複数の独立した能力から構成されるという「多因子説」に基づいた理論
ガードナー(Gardner,H.)によって多重知能説へと発展
(多因子説)
一般因子の存在は認められず、複数の基本的因子のみを見出した。知能は7つの因子から構成されており、基本的な7つの知能因子は、
・言語(V)
・語の流暢性(W)
・数(N)
・空間(S)
・記憶(M)
・知覚(P)
・機能的推理(I)
課題の遂行時にはこれらの因子の中から必要なものが組み合わされて用いられる。
(サーストンの7つの基本的精神能力)
・言語理解(Verbal Comprehension)
言葉の定義を理解したり、文章の内容を把握したりする能力。
・言語流暢性(Word Fluency)
言葉を素早く、豊富に生み出す能力。
・数的処理能力(Number Facility)
四則演算などの数学的な問題を素早く正確に解く能力。
・空間視覚化能力(Spatial Visualization)
空間における物体の関係性を視覚的にとらえ、操作する能力。
・連合記憶(Associative Memory)
情報を記憶し、再生する能力。
・知覚速度(Perceptual Speed)
物体間の類似点や相違点を素早く正確に認識する能力。
・帰納的推理(Inductive Reasoning)
個別の事柄から一般的な法則や規則性を見つけ出す能力。
ということです。
このような能力を評価するのが、つまりは通常の「テスト」です。
「基本的精神能力」と名づけられていますが、あまり現在で考えられる「メンタル」の部分は含まれていないように思われますね? 当時と現在での「メンタル」の取扱い方の違いでしょうか、、、?
そこで、前にも考えた「知能」と「知性」という問題が生まれてくるのではないでしょうか、、、
「知能」というモノの定義としては、これで十分なように思われます。
そして、一部の「 AI 信者」たちは、
” 人間がこのような能力を高めることはムダ、なぜなら、AI がすでに人間の能力を超えているから、、、、”
と言います。
確かに、現在の AI がすでにほとんどの人間の「知能」を超えています。
しかし、人間の能力というのは「知能」と「知性」の複合的なモノだと思うのです。
おそらく、AI に「知性」はありません。
「知能」と「知性」が ” 足し算 ” されるのであれば、人間が「知能」をいくら高めても確かにムダなのかもしれません。
しかし、「知能」と「知性」の絡み合い(?)は非常に複雑なモノであるように思うのです(時にはうまく絡み合わなくてローコアを出してしまうこともありますね、、、)。
よって、たとえ AI に「知能」が圧倒的に負けていようが、人間は「知能」を高めていく必要があるのだと思います。