今回は、”「教学インスティテューショナル・リサーチ(Institutional Research : IR)」の虚しさ ” というテーマで考えてみます。
”IR ” というと、
・IR(Investor Relations)
企業が株主や投資家に対し、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供していく活動全般。株主や投資家に対するだけでなく、顧客や地域社会等に対して、経営方針や活動成果を伝えること。
・IR(Integrated Resort)
統合型リゾート。民間事業者がホテルやレストラン、ショッピングモール、エンターテイメント施設、国際会議場・展示場、カジノ等の施設を一体的につくり、運営するもの。
等が、まずはイメージされるでしょうが、大学などの教育機関で行われる「インスティテューショナル・リサーチ(Institutional Research)」のことです。
なんでもかんでも略すというのは誤解を招きますね、、、” ID ” にしても「Instructional Design」より、当然「identification」と捉える方の方が多いでしょうし、、、
(インスティテューショナル・リサーチ:Institutional Research)
大学をはじめとする学校において、運営上の意思決定および計画立案に必要な情報を収集・分析・提供する業務カテゴリーを指す言葉。大学経営や教育改善をサポートする機能として、アメリカの大学で発展してきた。
「学修成果の可視化」をはじめとする、大学のさまざまな成果や課題を可視化し、分析するための機能。
大学や高等教育機関が自身の運営や教育の質を向上させるために行うデータ収集、分析、および報告活動。
<インスティテューショナル・リサーチの要素・意義>
1. データ収集
・学生の入学、進級、卒業に関するデータ
・学生の学業成績や学習成果
・教員やスタッフのデータ(採用、評価、退職など)
・財務データ(予算、支出、資金調達など)
・キャンパス施設の利用状況
・卒業生のキャリアパスや就職状況
2. データ分析と目的
・学生の進級や卒業率に影響を与える要因は何か?
・教育プログラムの効果をどのように評価できるか?
・大学の予算配分はどのように最適化できるか?
・学生や教職員の満足度はどの程度か?
3. 報告とフィードバック
分析結果は、大学の関係者(学長、学部長、教職員、学生、理事会など)に対して報告され、データに基づいた意思決定が可能となる。報告形式は、詳細なレポートから簡潔なプレゼンテーションまで多岐にわたる。
4. 戦略的計画と政策決定
・既存プログラムの改廃
・資源(予算、人材、施設など)の効果的な配分
・学生支援サービスの改善
5. 評価と継続的改善
大学のプログラムやサービスの継続的な改善サイクルの根拠として利用。大学が高い教育の質を維持し続けるための重要なツールとなりえる。
というようなことです。
学校の運営や財務状況などのことは置いておいて、「教育・学習」について、その内容(データ)を見てみると、
・学修行動調査(教学比較IRコモンズ)
・指定校推薦入学試験に係る評定基準値調査
・大学生活で身についた実力調査、
・学習施設等の利用状況調査
・卒業後の将来の活躍の場(グローバル・ローカル)調査
・大規模模試情報
・学生の活動歴、入学経路、学内表彰歴他
・1年、4年終了時にPROGテストを実施した結果
・入試結果、出身高校等
・入学前の志望理由、期待など ・インターンシップ経験
というような項目があり、これを丁寧に ” 分析 ” し ” 可視化 ” すれば、学校教育において非常に有益なことだと思います。
ところが、多くの日本の大学では、データの収集方法として
” 学生へのアンケート調査 ”
がトップを占めます。
勿論、成績などのデータはデジタル化されているでしょうから容易に取り出し、分析することは可能ですが、企業の「教育・学習」においての分析でも最も使われる手法、、、
” アンケート調査 ”
が「インスティテューショナル・リサーチ」でも主流になってしまっています。
学生生活の改善や補助等の情報としては大事な内容だと思いますが、
” 本校では、IR を積極的にやっています! ”
と明言している学校の多くが、” 学生へのアンケート調査 ” という曖昧で時にはデタラメなデータを根拠にしている場合があります。
これでは、「教育・学習」など何もよくなるはずがありませんね?
せめて、
・入学前の成績
・学習環境
・入試の成績
・在学中の成績
だけでもリアルタイムに分析すれば、「教育・学習」の改善に反映することは可能だと思います。
1. 教育プログラムの改善
IRのデータ分析により、特定の教育プログラムやコースの成果や効果が評価され、この結果を基に、プログラムの内容や構造、教授方法などが見直し、改善する。特定コースで学生の成績が一貫して低い場合、その原因を特定し、カリキュラムの変更や追加のサポートを提供する等。
2. カリキュラムの改革
カリキュラム全体の見直しにも活用。労働市場のニーズや学生のキャリアパスに関するデータを分析することで、大学は新しい学科やコースを追加したり、既存のカリキュラムを調整。学生がより実践的で市場価値の高いスキルを身につけること可能。
3. 学生支援サービスの強化
学生の進級率や卒業率、満足度に関するデータを分析し、学生支援サービスの強化が必要な領域を特定。アカデミックな困難に直面している場合、チュータリングやメンタリングプログラムの導入、心理カウンセリングの提供など。
4. 教育技術の導入
教育技術の導入や改善。オンライン学習プラットフォームの利用状況や効果を評価することで、効果的な教育技術の導入や既存技術の改善が行われ、学生の学習体験が向上し、学習成果も向上する可能性がある。
5. 教員のプロフェッショナル・ディベロップメント
教員のパフォーマンスや学生からのフィードバックに基づいて、教員のプロフェッショナル・ディベロップメントプログラムを設計。特定の教授法が効果的でないことがデータから明らかになった場合、教員に対して研修やサポートを提供。
6. 資源の効率的な配分
資源の配分を最適化。特定のプログラムに対する需要が高い場合、追加の教員や施設を配置することで、教育の質を維持または向上させる。
といったことができるはずなのです。
では、なぜ通常「教育・学習」に有効だと思われる
” インスティテューショナル・リサーチ ” を丁寧に真正に行わないのか?
・専門に担当する人材がいない
・経営層が重視していない
・改善した事例がない(日本において)
・企業との関係性
・
・
というネガティブな要因ばかりです。
私腹を肥やし、名誉ばかりを優先するような学長や理事長等が多い日本の大学では仕方のないことなのかもしれませんが、
「教育・学習」を第一に考える人がトップにいればその学校(企業も)は成功し、進化していくと思うのですが、、、、