根拠のない「トレンド」が、出てきてはあっという間に消えていくという状況は、いつの時代にもあることですが、現代はネットのおかげでその数の多さ、そのスパンの短さはすさまじいものがありますね。
少し知的だと自任している人は、「溢れている情報を選別することが大事」だと言いますね?
しかし、これもある意味の「トレンド」でしょう?
もう少しすれば「情報を選別すること」など不可能な時代になるのは明白ですからね、、、
嘗て、もの凄く短い期間ですが、「忘れる学習」などということが、教育・学習関連の研修で語られることがありました(AIや機械学習の「カタストロフィック・フォーゲティング」(catastrophic forgetting)とは違います)。
今となっては、もうみんな「忘れて」しまったでしょうが、、、
「忘れる学習」というのは、
情報を完全に忘れてしまうのではなく、情報を一時的に思い出せない状態になること(つまり想起強度が低下すること)が、その後の学習や記憶の強化に役立つというもの。
想起強度が低下した情報を再学習する際、新たな視点や理解を得ることができ、それによりその情報の保存強度が増す。
ということで、
本来の意味としては、「完全に忘れる」前に再度学習すると、記憶が強化されるので、ある程度の間隔をあけて学習する方がいい、ということです。
しかし、「忘れる」というコトバが独り歩きを始め、
「一旦、すべて忘れてしまいなさい!」
「忘れる方が、学習になります」
みたいに誤解した教育担当者が多数いました。
まさに、「本末転倒」とはこのことです。
「忘れる学習」は、以前記した「エビングハウスの忘却曲線」と「想起強度」、「保存強度」に由来しています。
(想起強度(Retrieval Strength))
・情報をどれだけ簡単に思い出せるかを示す。
・情報に頻繁に触れると、その情報の想起強度は増すが、想起強度が高い情報が必ずしも長期記憶に良好に保存されているわけではない。
・思い出せる(想起強度が高い)情報を反復して学習すると、その時点では記憶が強化されるように感じられるが、長期的な記憶(保存強度)にはあまり寄与しない。
(保存強度(Storage Strength))
・情報がどれだけ長期記憶に確実に保存されているかを示す。
・情報の繰り返し学習や時間の経過により増す。
・保存強度が高いと、その情報は忘れにくくなる(記憶の持続性)。
・保存強度が高い情報でも、想起強度が低ければすぐには思い出せない。
学習者が新しい情報を効果的に記憶するためには、これら二つのバランスを理解し、適切な学習戦略を選択することが重要とされているそうです。
それで、
「情報を一度に大量に学習するよりも、情報を分散して学習する方が保存強度を高め、長期記憶により良く保存することができる」
ということです。
「間隔をあけて復習」することや、「想起学習」が有効とされている根拠のようなものですね。
そういった「学習」を真っ向から否定はしませんが、学習者が「覚える→忘れる→覚える」なんていうことを意識する必要はまったくないと考えています。
「翌日にもう一度見直しなさい」
とか、
「二週間あけて復習しなさい!」
などということも、正直なところ ”無意味” だと思っています。
学者や教える側にとって、「エビングハウスの忘却曲線」、「想起強度」、「保存強度」等は ”基礎知識” としてもっておくべきですが、
何度も言いますが ”個人差” のある脳の機能に期待(?)して「学習方略」を決めるべきではありませんよね?
「一夜漬け」があまり効果がないということは、その通りですが、かといって「間隔をあけた学習」、「想起学習」がベターだとも思えません。
要は、「一万時間の法則」でも記しましたが、
「学習にかけた時間」
「学習した回数」
が最も重要です。
行動を必要とするスキルの習得と同じように、個人にとっての「学習時間」をかけた人と、たった一度だけ「間隔をあけた学習」、「想起学習」をした人の成績はどうだと思いますか?
「エビングハウスの忘却曲線」、「想起強度」、「保存強度」など無視して、毎日同じ内容を1週間復習すれば、おそらく殆どの習得は可能だと思います。
勿論、モチベーション云々の問題はあるでしょうし、他の分野の学習は進まないですが、、、
「失敗から学ぶ」ではなくて、「失敗しない」
と同じように、
「忘れる」ではなくて、「忘れない」
ことが大事だと思います。