「活性化拡散」という考えがあります。「脳」の「記憶」についての概念なので、心理学や脳科学などでたまに取り上げられますね?
(活性化拡散)
・ある情報が活性化されると、それが他の関連する情報を活性化し、さらにその情報が他の情報を活性化する(思い出す)という連鎖反応を引き起こすという考え。
・知識間の連想関係が強いものほど近い位置に配置されているという考え。
・記憶の連想的な性質を説明する。
ということです。
「記憶」については以前にも記していますが、今回はすでに「長期記憶」に入った情報(知識)の取り出しの話です。
また、「活性化拡散」と似た考え(少し違いますが)に、「プライミング効果」というのもあります(こちらの方がメジャーでしょうか?)。
(プライミング効果)
・刺激(プライマー)を受けることで、特定の概念が活性化する。
・関連する情報(ターゲット)を連想しやすくなる。
・先に与えられた要素が刺激となり、後続する刺激を誘発する。
・刺激が他の刺激の認識や反応を影響する現象。
ということで、
「活性化拡散」:記憶の取り出しや再生に関する概念
「プライミング効果」:情報処理や認識に関する概念
という違いがあります。
また、こういったことを「行動」や「行為」「一連の知識」という概念で捉えれば、これも以前に記したピアジェや TCI(Task-Centered Instruction)の「スキーマ」とも近いような気がします。
さて、「活性化拡散」の文脈では下記のようなことが語られます。
・連想記憶の説明
何かを思い出すとき、連鎖反応のように他の記憶を引き起こす。これは活性化拡散の一例で、ある情報が活性化されると、それと関連する情報も同時に活性化されるという現象。例えば、「海」を思い出すと、「波」、「砂浜」、「貝殻」など、海に関連する他の記憶が同時に思い出される。
・記憶の取り出しの促進
活性化拡散は記憶の取り出しを容易にする。ある情報が活性化されると、それと関連する情報も活性化されるため、必要な情報を思い出すための手がかりとなる。自由再生や手がかり再生といった記憶において顕著。
・記憶の組織化(強化)
記憶がどのように組織化されるかについての理解を深める。記憶は単に独立した断片として保存されるのではなく、関連する情報が互いにリンクされ、ネットワークのように組織化されている。これにより、一つの情報が他の多くの情報を引き連れて活性化され、思い出される。
・記憶の偏り
特定の情報を思い出すことができる一方で、なぜ他の情報を思い出せないのかという記憶の偏りを説明することにも役立つ。思い出す情報が活性化されると、それと直接関連する情報が優先的に活性化され、その結果、関連性の低い情報は思い出されにくくなる。
最近の「AI」ブームの影響で、よく「ニューラルネットワーク」、「ディープラーニング」が話題になりますが、乱暴に言えば、そういった考えの元になった概念のようにも思えます。
まぁ、「正しい」ようにも「正しくない」ようにも思えますね?
なにせ「目に見えないもの」ですから、、、それは仕方がないのですが、、、
ただ、「教育・学習」ということで考えれば、「正しい」という前提のもとにインストラクションを構築していくということが必要になります。
無理やりですが、「学習成果の分類」でいえば、「言語情報」「知的技能」「認知的方略」に該当しますね?
ある事柄を思い出し、それを応用し、独自の方略を作り出す、、、
どうでしょう?
と似ていないでしょうか?
全くの勘違い、知識不足かもしれませんが、そんな気がするのです。
では、どうすれば「活性化拡散」「プライミング効果」「スキーマ」という機能を「学習」させればいいのか、、、、
「スキーマ」の習得については TCI で「4C/IDモデル」や「ライゲルースの精緻化理論」で説明していますので、「活性化拡散」「プライミング効果」について考えます。
とはいっても、特別なモデルがあるわけではありません、考えられるのは、「記憶」についての基本的な(もしくは古典的な)「学習方略」です。
・反復学習
同じ情報を繰り返し学ぶことで記憶に定着させる。大量の記憶を詰め込むのではなく、少しずつ定期的に学習する「分散学習」が効果的。
・自己説明
学んだ内容を自分自身に説明することで理解を深め、記憶に定着させる。
・マインドマップの活用
学習内容を視覚的に整理することで、情報を関連付けて記憶しやすくする。
学習内容をストーリーとして組み立てることで、記憶に残りやすくする。
・メタ認知的学習
自分自身の学習過程や理解度を自覚し、必要に応じて学習方法を調整する。
・記憶術
特定の情報を覚えるための記憶術を用いる。例えば、単語や情報を特定のイメージや場所に結びつける「記憶宮殿」など。
・睡眠
学習後に適切な睡眠を取ることも記憶の定着には重要。睡眠中に脳は学習した情報を整理し、長期記憶に移すとされている。
・テスト効果
自分で問題を解くことで学習効果が上がる。学習した内容を定期的にテストすることで、記憶の定着を促す。
くらいですかね、、、、?
「学習」も「脳の機能」についても、個人差や傾向の違いなどあるので一概には言えませんが、こういったことを考えてインストラクションをすることは重要なのだと思います。
教授側も、「活性化拡散」の機能をインストラクションに使うということです。