営業職などに向けて行われる「ロープレ」は、スキーマを獲得したり、アウトプットによる記憶の強化などの「効果」があり、ほとんどの企業で行われる「教育」の一つです。
今回は、その ”「ロープレ」を更に”有効”にする方略” について考えてみます。
通常の「ロープレ」を行うのメリットとデメリットは、
(メリット)
・経験
実際にその状況に遭遇したときの対処法を学ぶことができる。これは新しいスキルを学んだり、未知の状況を模擬的に体験するのに非常に有用。
・自己理解
自分がどのように反応するか、どのような決定を下すかを理解するのに役立つ。
・問題解決
さまざまな視点から問題を考えるのに役立つ。より効果的な解決策を見つけることができる。
・コミュニケーションスキル
他の人々との対話を模倣することで、コミュニケーションスキルを向上させることができる。
(デメリット)
・現実とのギャップ
ロープレはあくまでシミュレーションなので、現実の状況とは異なる場合があり、期待外れの結果を生む可能性がある。
・エモーショナルな問題
感情的な反応を引き出すことがあり、これがストレスや不安を引き起こす可能性がある。
・時間とエネルギー
時間とエネルギーが必要になる。他の重要なタスクから時間を割く必要がある場合、負担となる可能性がある。
・参加者の不適切な行動
参加者が役割を誤解したり、不適切に行動したりすると、学習効果が損なわれる可能性がある。
といったところですね。
こういったメリットやデメリットを考えて各企業の「ロープレ」が行われているか? というと、多分、何も考えずに、
「ロープレ」=「教育」=「行動」=「実践的」=「必須」
のようなイメージがあってやっているのだと思います。
「ロープレ」についてはこれまでも何度か記してきましたが、今回は「記憶」の面と「自分事」という観点で考えてみます。
(記憶)
「ロープレ」というアウトプットを行うことで、
になり、ストーリーの記憶として「強化」されます。
「エピソード記憶」は、一度だけ起こった特定の出来事や経験を記憶する能力のことで、一種の「長期記憶」であり、具体的な時間や場所、関連する感情や思考などとともに情報が記憶されます。
この面が、世の中に「ロープレ」が溢れている最大の原因だと思います。
では、多くの人にとって現状の「ロープレ」が有効で、仕事に役立っているでしょうか?
私的には、「もっと有効にする方法がある」と考えます。
現在、巷で行われている「ロープレ」は、結局のところ、
「他人事」
だと思うからです。
1.教育担当者が、「ありがちなストーリー」を考え、
2.「質問」とそれに対する「模範回答」を用意し、
3.「模範回答」に近ければ「いい点」
4.「模範回答」から遠かったり、不適切なものであれば「わるい点」
5.1~4を何度も繰り返す
こんなのがほとんどでしょう?
確かに、スキーマとストーリーの記憶についてはある程度の効果があると思います。
しかし、教育担当者が考えた「ありがちなストーリー」、「質問」は、あくまで「他人事」でしかないわけです。
「他人事」のストーリーを覚えて、実際の自分の現場で使えるでしょうか?
それを使えるようにするには、
「ロープレ」を行う前に、
1.自分のストーリーを考える
2.自分のストーリーを書き出し
3.教育担当者に提出
4.教育担当者は各自のストーリーに沿った「質問」「模範解答」を用意する
ということをすればいいわけです。
つまり、「ロープレ」を行う全員のストーリーが違う必要があります。
これは、一見、「スキーマ」の理論に反しているように思いますが、「ロープレ」で人を集める際は、製品や、テーマが決まっているでしょうから、全く違ったストーリーにはならないはずです。
これくらいの手間をかけずに「ロープレ」を行えばどんな場面にでも適応できるなんて考えるのは間違っていますね、、、。
各自、自分のストーリーから、自分だけのスキーマを習得し、記憶し、実際の現場で使えるようになる、、、、、
と、思うのです。
また、上記の方略の場合、「話すこと」と「書くこと」の2つのアウトプットが行われます。
「話すアウトプット」と「書くアウトプット」、どちらが記憶に残るかは個々の学習スタイルや好みによりますが、。
「話すアウトプット」は、口頭で情報を表現することで、情報の理解を深めるとともに、情報を聞いた他の人との対話を通じて新たな視点や理解を得ることができ、
「書くアウトプット」は、情報を処理し、整理し、要約する能力が求められ、結果的に深い理解と記憶の定着に繋がります。
「他人事のロープレ」から「自分事のロープレ」に変えるという認識を企業の教育担当者には持ってもらいたい、、、と思うのです。