louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「全習法」と「分習法」の使い分け・・・

スポーツ訓練の分野でよく使われるメソッドに、

「全習法」「分習法」

というのがあります。


「全習法(Total-learning Method)」は,

学習しようとする課題の全体をまとめて一度に行う,ということを繰り返し継続的に行う方法。

 

「分習法(Partial-learning Method)」は、

あらかじめ学習しようとする課題を部分へと分け,分けられた部分それぞれについて個別に学習を行う.その後,分けられた部分を統合して全体を形成しようとする練習法。


です。


各人の前提知識、スキル、意欲、学習内容、学習目標等によって、「全習法」「分習法」が使い分けられます。


インストラクショナルデザインや「教育・学習」の分野においては、「4C/IDモデル」「ライゲルースの精緻化理論(Riegeluth's Elaboration Theory)」といった、「TCI(課題中心型インストラクション」が出てくるまでは、「分習法(Partial-learning Method)」こそ ”正義” のような感じでした。

「全習法」と「分習法」

勿論、現状でも、「4C/IDモデル」「ライゲルースの精緻化理論(Riegeluth's Elaboration Theory)」を採用して教育デザインを行っているところはほとんどなく、「分習法(Partial-learning Method)」が圧倒的に支持されているとは思います。


スポーツの分野では、子供や学生に興味を持たせて、その後に育てるといった場合に、「全習法」的なアプローチがよく取られます。

 

とにかく自由にやらせて、興味を持たせる、、、ということと、自ら学び、修正していくということです。


今はもうやめてしまいましたが、以前、空手の道場で黒帯を獲ってから数年間週に1度指導をしていたことがありました。

 

空手の道場では、「体験入門」というシステムがあります。

「体験入門」は、見学に来た人に、一般の道場生と全く同じ稽古を「体験」してもらいます。

「基本」「移動」「型」「組手」と、細かいことは指導せず、マネをしてもらいます。

勿論、危険性が伴う「組手」などは道場生には相手をさせず、指導員が痛くないように、怪我をしないように行います。

この「体験入門」を何度か経験し、興味をもった子供が正式に入門するという仕組みです。


企業内教育では、興味ということではなくスキーマを習得させるために、「4C/IDモデル」などに近い形で「ロープレ」などが行われます。

ただ、何も考えられていない「ロープレ」は、全く入門する気もない子供の「体験入門」と同じで、「教える側」「学習者側」ともにメリットがありませんから、そこは別として考えます。

 

”タイム・イズ・マネー” の社会では、細かいことは気にせず、とにかくゴールを目指す、、、といった流れがあり、

 

どうにか「全習法」で教育をやれないか? と考えた結果「4C/IDモデル」「ライゲルースの精緻化理論(Riegeluth's Elaboration Theory)」が出てきたというわけです。


普通に考えれば、

基礎を1からから学び、基礎があって応用できるようになる、、というのが”正論”であり、それは永遠に変わることのない”真実”です。


「全習法」のメリットとして言われることは、TCIのところでも記しましたが、「複雑な課題」に対して、まず「全体」が見通せる(ゴールが見える)ということと、「認知負荷」を減らすことができるという点です。


先ほど記した「空手の稽古」などは、毎回同じ稽古を行います。全体の稽古を行いながら、上手くできていない道場生にはその都度、上の帯の道場性がアドバイス修正を行います。JiT「足場架け」です。

そのアドバイスや修正内容を自分で消化し、上達していくわけです。


「学習教科」だと、

 

・数学

一つの概念が次の概念に直接つながることが多いので、全習法が有効。特に、高度な数学や計算では、全体の流れや複雑な問題を理解するために一度に多くの情報を処理する必要がある。


・物理学

物理学も一つの理論が他の理論に直接つながっていることが多い。法則や原理を理解するためには、それらの関連性を把握することが重要。


・化学

化学反応や化合物の性質など、化学の概念はしばしば複雑で互いに関連している。そのため、全習法は化学の理解を深めるのに役立つ。

「全習法」に向いている場合があります。


一方、「分習法」は、

 

言語学

新しい語彙や文法規則を覚える際に、定期的に復習することで記憶に定着させることができる。単語の暗記など。


・歴史

歴史の出来事や人物、日付などを覚えるためには、定期的な復習が有効。


・生物学

生物の種類や構造、生態系など、多くの情報を記憶する必要があるため、分習法が有効。


・医学

病名、症状、治療法など、大量の情報を覚える必要がある。これらの情報を定期的に復習することで、記憶に定着させることができる。


に向いている、、などといわれます。


時と場合によって使い分ければいいだけの当たり前の話ですが、

企業内教育ということで言えば、

「知識」は「分習法」

「スキル」は「全習法」

 

という大きな括りの中で、課題内容によって、それぞれを組み合わせたりするというのが正解かもしれません。

 

とはいえ、企業内で教育を担当しているひとで、その判断ができる人はほとんどいませんが、、、、


「4C/IDモデル」のJeroen van Merrienboerさんが、11月にお亡くなりになられたそうです、、、、R.I.P.