今回は、学習の ”伸び悩み” と、その原因の1つで、大きな要因である「経験の罠」を考えてみます。
通常、「真正な学習」を行えば、各人のスピードに差はあっても、確実に「知識・スキル」は習得できます。
しかし、多くの学習者は、学習しても成績が伸びない、習得できない、、などという ”伸び悩み状態” を経験します。
(伸び悩み)
思うように向上・成長せずにいるさま、一定程度で停滞しているさま、などを意味する表現。
学習者が ”伸び悩み” に陥る原因は多くありますが、少し挙げてみると、
(1)目標設定の誤り
あまりにも高すぎる目標や、逆に低すぎる目標を設定すると、適切なモチベーションが保てない。
(2)適切なフィードバックの欠如
自分の強みや弱み、進歩の状況を適切に把握できないと、どこを改善すべきか分からない。
(3)学習環境やリソースの不足
学習のための環境やリソース(時間、教材、指導者など)不足。
(4)経験の罠
過去の成功体験や固定化した思考パターンに囚われて、新しい視点や方法を見逃し、成長が停滞する。
(5)無理な努力(過度学習、燃え尽き)
一時的に過度な努力をして疲れ果ててしまい、その後の学習や仕事に取り組むエネルギーが不足する。
個人の問題ですから、上記のような一般的な原因でない場合も多いでしょうが、
(1)(2)(3)は「教育」「教授」の失敗です。”真正な教育” が行われず、”真正な学習” になっていないということです。
(4)(5)はある程度「学習者」側の問題?
ということで、今回のテーマは(4)の「経験の罠」です。
(経験の罠)
過去の経験に基づいて現状や未来を判断し、新しい視点や考え方を見逃してしまうことを指す概念。特に、成功体験がこの罠を作り出す原因となりやすく、その方法が常に正しいという先入観に囚われてしまうことがある。
経験の罠に陥ると、以下のような問題が生じる可能性がある。
・変化に対応できない
過去の経験が現状や未来を正確に反映していない場合、その経験に基づいた判断は誤りとなり、変化に対応できなくなる。
・創造性が失われる
過去の経験に囚われると、新しい視点や考え方を探求する機会を失い、創造性が失われる。
・学習能力が低下する
過去の経験に頼りすぎると、新しい情報や知識を吸収する機会が減り、学習能力が低下する。
「過去の成功体験」というのは、非常に厄介ですね?
「教える側」も「学ぶ側」も、きっと誰もがその人なりの「成功体験」を持って生きていますから。
「前はこうやったら上手くいった」
「100点をとった時は、こんな風に勉強した」
「私が東大に入れたのは・・・」
「顧客の心を読むには、○○すればいい・・・」
「上司の言うことにYESとだけ答えていれば出世できる」
みたいに、、、
まぁ、多くの本に書いてあるように「成功体験」は、
”特定の時、特定の状況、特定の環境、、、、における単なる事例でしかありません”
”だから、「成功体験」を忘れよう、、、、”
といったような内容をとても簡単なことのように、、、、
しかし、「忘れることが得意な生物」である ”人間” でも、数少ない「いい記憶」というのは、
時間の経過とともに更にデフォルメし、美しく再形成してしまうので、、
実際に「忘れること」は、なかなか難しいですね?
まして「学習」という行為には、「個人の思考・方略・行動」が大きな部分を占めます。
人が、「どういう思考で、どのような方略で、どうやって学習して習得できた」のかは、まずわかりません。
しかし、偉い先生たちは、
”自己反省を行い、自分の思考や行動パターンを見直すことが重要”
とだけ言って、突き放してしまいます。
”それはこちら側ではなく、アナタの問題だよ”
と。
いや、そうではなくて、原因が「経験の罠」であろうがなかろうが、”伸び悩み状態” に学習者が陥った場合、
"ベストではないかもしれないが、ベターな教育・学習デザインを提示続ける”
ことが重要だと考えます。
つまり、それこそが 「PSI:Personalized System of Instruction(個別化教授システム)」であり、「アダプティブラーニング(適応型学習)」になるわけです。
とはいえ、ほとんどの「教える側」の人たちは、生徒、学生、部下が ”伸び悩み状態” に陥っていることさえ把握していないのが現状でしょうが、、、