今回は、学習方略としての ”「答えをみてもいい!」” ということについて考えてみます。
”完全習得学習” を実施する中で、"テストに満点合格しない" と次の学習に進めないという ”方略” があります。
これは正当過ぎるやり方で、「公文式」も「カーンアカデミー」もこの方略をとっています。
ところが、どうやっても ”満点合格できない人” がでてくる場合があります。
何度も学びなおし、テストを受けても ”満点” が取れない、、、
さて、こういう場合、どうすればいいでしょう?
実際にこういう状況を経験された方も多いかもしれません。私自身も、以前研修の中で担当したことがあります(といっても、自分でデザインした方略のサポートを依頼されただけですが)。
「自学→テスト合格→次の自学」 という、TOTE-Model で研修をデザインしたのですが、
1人の方が、途中のテストで何度やっても8割、9割しか取れず、進捗がどんどん遅れて行きました。
研修のスケジュール的にこのままでは間に合わないと判断し、
いつもアドバイスを頂いていた平岡先生(当時は熊大、現在は放送大)に相談しました。
平岡先生からのアドバイスは、
「では、採点する前に、”答え” を見てもいい、ということにしたらどうでしょう?」
ということでした。
「答えを見て、、、ですか?」
と、すぐには賛同できませんでしたが、
「人と状況によりますが、それである程度 ”切り替え”られる場合もありますし、スケジュールを考えると、今のままやっていると、その人だけが期間中にすべての内容を学習できないリスクがありますね?」
確かに、、、
確かに、その通りです、、、。
平岡先生のおっしゃることは、、、的確で、疑問を挟む余地はありませんでした。
この方略を行うポイントは、
”最初から答えを見るのではなく、まずは自分で回答を作成した上で答えを見る”
ということです。
それ以降、こういった場合の助言をもとめられた場合、私自身も
「答えをみてもいい!」
という ”方略 ”を薦めることが何度かありました。
大学のテストで、”辞書持ち込み可”とかありますよね?
これとは ”本質” が違います。
この場合は、大概、単語が重要なのではなくて、例えば全文を読んで、その内容が示していることとか、自身の感想などを問うので、「学習目標」が違うということです。
「答えをみてもいい!」方略は、
”本来は学習して習得しないといけない内容ではあるが、その内容を習得できるメリットよりも、全体としてスケジュールが遅れ他の習得すべき単元にたどり着けないデメリット解消を優先”
したということです。
「教えない教育」
といつも言っているのに、
「矛盾していないか?」
と、言われれば、確かに矛盾しています。
本来は、すべてを確実に”完全習得”すべきですし、”教える=答えをみてもいい”というのは邪道です。
しかし、
人と、場合と、状況と、環境によって方略を変えていくというのも必要です。
学習方略のデザインは、
”こうでなくてはならない”
ということではなくて、
”よりベターな方を選択する”
ことが重要です。
要は ”柔軟な考え” フレキシブルに対応できるかどうかです。
「教育・学習」理論を学ぶ人の中にも、”柔軟な考え” をできない人を多く見てきました。
というより、平岡先生のようにフレキシブルに思考を組み立て直せる人はアカデミアにもほとんどいませんね?