今日は、通称「グリーンブック」:「学習者中心の教育を実現する インストラクショナルデザイン理論とモデル」で有名な、チャールズ・ライゲルースの「精緻化理論」と、「学習する組織」のピーター・センゲの師匠(?)である「偉大な組織の最小抵抗経路」等を執筆しているロバート・フリッツのお話です。
では、まずは
(ライゲルースの精緻化理論(Riegeluth's Elaboration Theory))
教育設計で、学習者が「新しい情報を既存の知識に関連付けて理解」し、記憶する手助けをすることを目的。主に複雑な知識やスキルを教える際に用いられる。
教材の構築を「単純な全体像から始め、徐々に詳細を追加していく」というアプローチを推奨。これは、学習者が全体像を掴んだ上で、詳細や例外を学ぶことで、深い理解を得ることができるという考え方に基づいている。
具体的には、まずシンプルなバージョンのタスクや概念を紹介し(これを「コア」や「基本的な構造」と呼ぶ)、その後でより複雑なバージョンや詳細を加えていく(これを「精緻化」や「エラボレーション」と呼ぶ)。
このプロセスは反復的に行われ、学習者の理解が深まるにつれて段階的に内容が複雑になる。
学習者が、意味のある学習を促進するための有効なフレームワークとなる。
教材や教育プログラムを設計する際に、情報を”構造化”し、学習者の認知プロセスをサポートする方法に焦点を当てる。
<例>
①: シナリオベースドラーニング
リアルな状況や課題を提示し、学習者に対話的な体験を提供。この方法では、情報をコンテキストに組み込み、学習者が問題解決や判断力を向上させることができる。
②: コンセプトマッピング
学習者にコンセプトマップを作成させる。これは、情報を視覚的に整理し、異なる要素との関連性を強調するための有効な方法。
③: システム思考アプローチ
システム思考アプローチを採用。これは、学習内容をシステム全体として捉え、要素間の相互関係を明確にする方法。学習者は、システム全体を理解し、問題の複雑さに対処するスキルを習得する。
ということで、一般的には「課題中心型のインストラクション:TCI(Task -Centered Instruction)」のモデルの一つとされていますね?
つまり、学校教育ではなく、企業内教育に向いている理論でありモデルなわけです!
また、このモデルは、
最初に「広角レンズ」で全体をみて、詳細な部分へ焦点を当てることを繰り返すということで「ズームレンズモデル」とも呼ばれているようです。
同じくTCIのモデルとされている「4C/IDモデル」が前提知識をある程度無視して、Just in Timeのサポートで対処するのとは違って、教育・学習の基本である、簡単なことをクリアして複雑な問題、そしてまた簡単なことから複雑なことへの反復、という王道といえば王道の考え方だと思います。
企業内教育は、
「全員が、同じレベルの高い知識と高いスキルを目指すもの」
であるでしょうから、最適とは言わなくてもベターであることに間違いはありません。
企業で、こういう理論やモデルが採用されないというのは、まったく理解できません。
が、
誰も、知らないし、誰も、知ろうとしない、、、、んですね、、、
さて、そろそろロバート・フリッツ先生との関連性について(無理やりですが、、)
フリッツと言えば、「構造」「システム思考」ですね(何せセンゲの師匠ですからね?)
センゲの「学習する組織」の5つのディシプリンの中で、もっとも大事なのは「自己マスタリー」で、この「自己マスタリー」の考え方のもとになっているのが、フリッツの「構造思考」だと言われています。
詳しいことは、センゲかフリッツの著書を読んでください(ほんと必読です!)。
今回は、「ライゲルースの精緻化理論」との関係なので、フリッツの「リアリティをどう見るか?」ということについて記します。
フリッツは組織構造や問題をみる3つの視点を説明しています。
(クローズアップ)
目の前の出来事・過度な詳細、近すぎて何をみているのかわからないフレームのこと。
(ロングショット)
いつもぼんやり。あまりにも後ろに下がりすぎると、何があるのか見えなくなる。いつも世界をぼんやり遠くから見ていて、何があるかよく見えなくなる。
(ミディアムショット)
客観的な形、傾向、パターン。木と森の両方を見ることが可能になる。詳細を見つつ、同時に形作られた関係も認識できる。クローズアップから一歩引いたり、ロングショットから接近したりして、形やパターンが見える位置に移動できる。様々な対象物とそれらの織りなす形を見て取ることができる。現在を見つつ、同時に現在は過去とつながっていて、その現在が未来にどう展開しうるかを見ることができる。
フリッツは、「ミディアムショット」を推奨しているわけです。
これは、センゲの「木を見て森も見る」の原型かもしれませんね?
ライゲルースの「単純な全体像から始め、徐々に詳細を追加していく」というのは、「ロングショット」から「クローズアップ」を繰り返すということで、「ミディアムショット」はなく、少し見方が違うようには思うのですが、最終的には「木を見て森も見る」ということができるのではないかと思います。
これは、ライゲルースが間違ってるとか、フリッツが間違っているということではなくて、対象の違いによるので、どちらも正解ではないかと考えています。
ライゲルースは「教育方略」、フリッツは「組織問題」という違いです。
しかし、ともに「木を見て森も見る」になってますね!