louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「認知負荷理論(Cognitive Load Theory)」と「IDモデル」との関係性

「4C/IDモデル」スキーマ理論モデル」「ライゲルースの精緻化理論」のところでも少し記しましたが、

 

今日は、「認知負荷理論(Cognitive Load Theory)「ID(インストラクショナルデザイン)モデル」について考えてみます。


「認知負荷」という考えは、1970年代に、ワーキングメモリ容量の観点から始まりました(たぶん)。

そして、1980年代に、認知負荷はワーキングメモリでの情報の貯蔵と処理に発生する負担であるとされ。

1990年代に、課題外在性負荷を下げようとする教材、教授デザインに関する研究が出てきた。

というわけです。


「認知負荷」を学習への対応として有名にしたのが、ジョン・スウェラー(JohnSweller)「認知負荷理論(Cognitive Load Theory)」ですね?

また、「4C/IDモデル」Van Merrienboerもこのことを強調しています。

 

(認知負荷理論)

 

脳のワーキングメモリは有限であり、それを使い果たしてしまうと新しい知識の定着(学習)やタスクの完了が困難になる。ゆえに、インプットされる情報の量や種類が人の学習能力に影響を与えそうな場合には、認知負荷理論を活用するのが適切である。


・課題内在性負荷(Intrinsic Cognitive Load)
・課題外在性負荷(Extraneous Cognitive Load)
・学習関連負荷(Germane Cognitive Load)


>課題内在性負荷

情報自体の難度の高さが与える負荷を意味する。情報の内容を理解するのが困難になればなるほど、認知の負荷が高まる。


>課題外在性負荷

情報自体の難度ではなく、外的要因によって引き起こされる認知負荷である。この負荷により、記憶すべき情報を他と混同してしまう。


>学習関連負荷

「適切」な認知負荷であり、脳がスキーム(フレーム)を構築しているときに発生。スキームの構築・蓄積が、判断を可能にする。スキームの構築・蓄積は、認知負荷の軽減につながる。

 

概要としては、「課題外在性負荷」を下げ、ワーキングメモリ容量を超えない程度に「学習関連負荷」を高めるのがよい教材、教授設計であるということです。


確かに、「認知負荷」が高いと「学習」やスキルの「習得」、タスクの「実行」に害を及ぼす、ということは理解できますね?


ワーキングメモリの容量は限られているので、それをオーバーしてしまったり、処理できない困難さがあれば、長期記憶に入らないということです。

認知負荷理論とインストラクショナルデザインモデル

そこで、「4C/IDモデル」、「スキーマ理論モデル」、「ライゲルースの精緻化理論」などが出てきたわけです。


「課題中心型のインストラクション:TCI(Task -Centered Instruction)」です。


こういったモデルが出てくる前提に「認知負荷理論」があったということですね?


「4C/IDモデル」のところでも記しましたが、このようなTCIは、


「企業内教育」に向いています。


「前提知識」や条件をとりあえず置いておいて、ロープレ、シミュレーションをしながらジャストインタイムのサポートを受けながら習得していくというモデルですから、スキーマの習得が必要とされる分野においては、かなり有効なモデルだと考えています。


ただ、TCIは「学校教育」には”絶対的に向いていない”と思います。


まず、「学校教育」は、


”生徒が「仕事として学習」し、報酬をもらう場ではない!”


からです!


また「学校教育」では、


”誰一人取り残さない”


ことが原則です。

「落ちこぼれ」「ドロップアウト」を出しているということは、学校教育の失敗なのです。


一般的に「認知負荷理論」では、方略や設計によって「操作」できるのは「課題外在性負荷」と「学習関連負荷」であり、「課題内在性負荷」へのアプローチは考えられていません。

 

TCIもそのコンテキストで、「課題外在性負荷」と「学習関連負荷」を考慮したモデルであるわけです。


課題内在性負荷)=情報自体の難度の高さが与える負荷=(学習対象そのものが持つ複雑さや難易度による負荷許容レベル


つまり、”学習者個人の負荷能力”が考えられていないということです。


1インストラクションの「学習目標」が同じであれば、教材や方略をいくら工夫しても、TCIでは全学習者に対応することは難しいですね?


インストラクショナルデザインは、まず学習する内容が決まってからのことですから、パラドックスと言えば強烈なパラドックスです。


それゆえ、「学校教育」の研究者は、TCIではなく、PSI(個別化教授システム(Personalized System of Instruction))適応学習(Adaptive Learning)を推奨するのです。


個人の負荷能力が違うのですから、教材、方略の最適化というのはムリな話です。


「TOTEモデル」等のインストラクションを「受ける必要が無い」「受ける資格がない」、、、という判断が必要で、それに対応するインストラクションを提供するということです。


しかし、現実では、「学校教育」「TOTEモデル」でいうところの、


”「前提テスト」は合格、「事前テスト」は不合格”


の人を想定(あくまで想定)して、インストラクション(?)を行っています。


よく学校の先生様はいいますよね、、、

「中くらいのレベルの人たちを対象に授業をしている、、、」

 

何を根拠に「中くらいのレベル」と判断しているのでしょうね?