「4C/ID モデル」は、企業教育に向いたモデルなので、日本では殆ど使われていないですが、似たモデルに、「ストーリー中心型カリキュラム(熊大大学院)」 や「マーク・プレンスキーのスキル基盤型カリキュラム」 等があります。
では、「4C/ID モデル」 とは?
複雑なパフォーマンス(複合的なスキルの遂行)が学習課題の場合に、マッチするとされるIDモデルです。オランダの van Merrienboer によって、提案された「全体的タスクを意識した」インストラクショナルデザインモデルです。
「4C/ID モデル」は、”認知負荷”を減らすように、学習タスクを系列化させることを考えたデザインを作成します。
特徴として、下記のような内容があります。
・ 複雑な学習はスキル、知識、態度の統合が必要!
・ 真正なタスクでの作業を強調し、現場での実践を刺激するタスク中心
・ スキーマの習得: ある物事に関する知識について似たような事例が集まると、それらに共通したものを抽出して一般的知識として捉えることが可能になるという認知心理学の概念
さて、4つのコンポーネントとは、
①学習タスク(Learning tasks)
②支援的な情報(Supportive information)
③手続き的な情報(Procedural information)
JIT(just in time)情報
④部分的タスクの実践(Part-task practice)
です。
では、4つのコンポーネントの構成要素の説明をしていきます。
①学習タスク
具体的で真正な全体的タスク
・ 学習タスクを設計する
・ シーケンスタスクの練習(反復)
・ パフォーマンス目標を設定する
知識やスキルを断片的に学ぶのではなく、全体的なタスクを常に見通しながら学習する(スキーマ習得)
【学習課題設定のポイント】
・課題は現実世界と関係のあるもの
・Whole task modelを意識して設計
→個々のタスクは全体の文脈の中の一部であり、それぞれがどう関係しているか意識しながら学ぶ
・シンプルなタスクと複雑なタスクがミックスされること
・新しい課題は、これまでの課題よりも難しいものであること
・経験者からの指導は徐々に減っていくこと(足場かけ)
②支援情報
新しい要素 と 学習者がすでに知っていること(できること) を認知させる(習得ではなく認知)
・ 事例の提示、スキルの提示
・ 課題の遂行を支援(どうアプローチするか?)
"How a domain is organized?(どんな構造なの?)":メンタルモデル(Mental model):概念の構造化
“How to approach tasks or problems in a domain?"(どうアプローチする?):認知ストラテジー (Cognitive strategy):学習方法
"How does this work?(どうやって機能する?)":因果モデル(Causal model):因果関係を理解したり、証明したりするモデル
【支援情報設定のポイント】
・非反復的な学習をサポートすること
・認知に関する戦略とフィードバックが含まれていること
・学習者は常に利用可能であること
③手続き情報
タスクを遂行する上で必要な情報を提供する
・ 前提知識、スキルを提供
・ ジャストインタイム
・ 反復的な情報
【手順情報のポイント】
・事実、概念、フィードバックを分けて与えます。
・指導の際には、方法(How to)、デモンストレーション、例が提供されます。
・学習者が必要とするときに与えられ(Just-in-Time)、習得するとすぐに消えます。
④部分練習
各スキルの練習
・学習により認知スキーマを作る(意識の自動化)
そのためには膨大な練習が必要
・繰り返される部分的なタスク
・タスクに対する認知は獲得している後で、繰り返しの練習
・知識・スキルの定着
(営業活動が自然にできるようになると、「営業のスキーマを獲得した」ということになる)
では、最後に「4C/IDモデル」をまとめると、
・複雑(複合的)な課題の場合に
・全体的タスクを学習者に意識させ
・前提知識やスキルは完璧ではなくても
・実務に近いロープレ等の部分タスクを行い
・ジャストインタイムでヘルプやスキルを支援し
・スキーマの習得(ベースタスク習得)をさせ
・難易度を上げていく部分タスクを実行
・問題解決ではなく課題中心型
ということになります。