ビジネス関連では「ハロー効果」で有名な、エドワード・L・ソーンダイク(Edward L. Thorndike)の「試行錯誤学習」と関連した事案について考えてみます。
(ハロー効果(Halo effect))
・一部の特性が他の特性に対する評価に影響を与える心理学の現象。
・心理学者エドワード・ソーンダイクによって1915年に提唱された。
・ある人が物理的に魅力的であると感じた場合、その人が知的、友好的、信頼性があるなどといった他の肯定的な特性も持っていると無意識に評価する。
・一つの「ハロー:〔聖人の頭の後ろに描かれる〕光背、後光、〔偉人の周りにあると考えられる〕後光、高貴な雰囲気」が他の特性すべてに影響を与えてしまうという意味。
ですね。
多くのビジネス書にも引用されているので、どこかで聞いたことがあるでしょう?
この効果から、
「人は見た目が、、、」
とか、
「ジョブスはすごい!」
「イーロンは何でもできる!」
とか、
「彼は何をやらせても大丈夫」
みたいになるわけですね?
さて、今回は「試行錯誤学習」の話です。
(試行錯誤学習)
・さまざまな問題解決行動を試す過程で、学習が成立すること。
・失敗から学び、その経験を元に行動を改善し、目標達成に向けて最善の戦略を見つけ出すというプロセス。
・「パズルボックス実験」で実証。ネコが箱から脱出するためには特定の動作を行う必要があり、ネコは最初はランダムに動作を試みるが、徐々に正しい動作を学習していった。
・問題解決能力や創造性、自己学習など、様々な認知機能とも関連している。
・目標に到達するためにさまざまな行動を試し、その結果によって最も効果的な行動を学び取るという学習の形態。
いわゆる、「trial and error」ですね!
前に「 「失敗から学ぶ」という安易な思考 ~ ほんとにそれでいいの? ~」でも記しましたが、昨今の、
「失敗から学ぶ」ブーム
の元ネタ(?)です。
しかし、元ネタが「ネコ」だと知っている人は結構少ないかもしれませんね?
インストラクショナルデザインや教育学習理論においては、形成的評価での修正はあっても、最終的に失敗するという概念はない(というか、失敗しないようにデザインする)ので、「失敗から学ぶ」なんていう考えは到底肯定できませんが、そうは言っても、「trial and error」が無意味だとは思っていません。
生きていく上で、すべてが成功するなんていうことはありえないので、「trial and error」は当然必要でしょう。ただ、いかに「失敗しない」ことを考えることが重要なのです。
「試行錯誤学習」では、結果によって直前の行動を生起しやすくなったり、生起しにくくなったりします。「効果の法則(Law of effect)」です。
「結果によって行動が変化する」
これは誰もが経験することですね!
(効果の法則)
・満足の法則
行動の結果、生体に満足や快状態がもたらされると、その行動と結びつき、繰り返されやすくなること。
・不満足の法則
行動の結果、生体に不満足や不快状態がもたらされると、その行動と結びつき、生起しにくくなること。
行動の結果によってもたらされる快や不快などの強度が強いほど、その行動との結びつきは強くなるとされています(強度の法則)。
これもビジネス書で散々書いてある、
「成功体験」
の元ネタです。
「インセンティブ」が学習のモチベーションに与える影響とも関連しているので、特に「企業内教育」においては重要な考えだとは思います(「外発的動機づけ」が無くては「企業内教育」など成立しないので)。
学術的な思考や批評、引用、参考なども、他分野や他の研究者から影響を受けることは当たり前なので、ビジネス書ばかりを批判はしたくないですが、元ネタはどこにあるのかを明らかにしていないモノが多くて閉口します。
ソーンダイクは大昔の人で、しかもあまり好きではない「行動主義心理学」の分野なので大して興味はないのですが、彼が提唱した説にはある程度参考になることも多いですね。
最後に、ソーンダイクが提唱した「レディネス(readiness)」を考えて終わりましょう。
(レディネス)
・学習者が物理的または心理的に学習活動に取り組む準備が整っているとき、その学習活動に対する反応が強化される。
・逆に、学習者がその準備が整っていないとき、強制的に学習活動を行わせると、不満感や抵抗感を生じ、学習効果が下がる可能性がある。
・学習者のモチベーションや関心、注意力、疲労度など、学習に影響を及ぼす様々な要素を考慮に入れることの重要性。
「企業内教育」は「仕事」なので強制的に、、、といつも記していますが、もちろん理想はそうではありません。それはあくまで「方法論」であり「方略」、「手段」です。
でも、幼稚な、
「10分前行動」
や、
「前日にテキストを読んでくること!」
などを、「レディネス」と言っている人たちも多くて、、、、そうじゃないですよ、、ということです。