今日は、前にも少しだけ記した「ナッジ(Nudge)」について、どのように「教育」に活かすことができるか? を考えてみます。
「ナッジ(Nudge)」は、「実践行動経済学/リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン」で有名になりましたね!
ベストセラーになったので読んだ人も多いでしょうが、まぁ、面白い本です。まだ読んでいない人は是非読んでみてください。
(ナッジ(Nudge))
・本来の意味は「(合図のために)肘で小突く」、「そっと突く」。
・集団あるいは個人の行動と意思決定に影響を与える途として、陽性強化 (positive reinforcement)と諷喩(indirect suggestion, 他の事にかこつけてそれとなく遠回しにさとすこと)を提案する。
・人々の意思決定を特定の方向に軽微に影響を与えることを指す。人々が自分自身の最善の利益に従って行動するように促すための方法であり、強制ではない。
ということで、簡単に言うと、「いかにも自分で選択したかのように思わせる」方法、、、のようなものですね。
いい意味にとると「影のサポート(足長おじさん?)」、悪い意味でとれば「罠に嵌める(操る)」感じですかね?
セイラーのこの理論は、共感を集め、様々な分野に広がりました。
一番有名なフレームワークに ”EAST” というのがあります。
・Easy(簡単・簡潔)
面倒な手順があれば取り除き、簡単に取り入れられるかたちにする。
・Attractive(魅力的・印象的)
相手の注意を引く工夫をするということ。
人の損失を回避するという特性を活かすことで、行動を起こすきっかけを与える。
・Social(社会的)
社会性を活用する。
他人の行動に合わせやすいという特性を利用。
「周りの人がやっている」というメッセージを強調し、行動を促す。
・Timely(タイミング)
実施するタイミングが重要。
ニーズが高まっているときに、提示する。
いかにも、「胡散臭く」感じられますね?
心理学の話ですが、これに「行動経済学」なんてフレーズが入ると、一気に「怪しい」雰囲気になります。
とはいえ、セイラーもカーネマンもそれでノーベル賞をもらっているわけですが、、、
さて、今回は、この「ナッジ(Nudge)」をどうすれば企業内教育がいい方向に行く手段になるかということです。
いつも言っているように、
「教育は学習の支援」
です。
教育は本来、「従」であるべきで、教える側は「壇上の賢者」ではなくて「サポーター」になるものです。
そう考えると、教育デザインを考えることは「ナッジ(Nudge)」の理論と整合性がいいように思います。
例えば、下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?
・リマインダー
学習者に対して、締め切りやスケジュールなどをリマインダーとして送信する。忘れがちな人でも必要なタスクを遂行できるようになる。
・目標設定
真正な目標を設定することで、学習者はその目標に向けて努力し、自己管理のスキルを磨く。
・フィードバック
定期的で適切なフィードバックは、学習者の学習進度を把握し、必要に応じて調整することを助ける。
・報酬とインセンティブ
良い成績や努力を報酬で称えることで、学習者の動機付けを高める。
・選択肢の提示
いくつかの選択肢を提示することで、自分の選択をより意識的に行うことがでる。コースの選択やキャリアパスの選択など。
・学習環境の調整
学習環境を整えることで、学習に集中できるようになる。静かな学習環境の提供や、学習用のリソースの提供など。
「ナッジ(Nudge)」の”正義(?)”とか、”陽”の部分をうまくデザインすればいいのだと思います。
ここでは、「騙す」「操る」「嵌める」、、、などということは考えないことですね?
「ナッジ(Nudge)」の”悪(?)”、”陰”を出すと、
・意図しない結果
ナッジの意図をしない方向に向き、逆効果になる場合がある。
・個人の自由への侵害
個人の自由を侵害すると見なされることがある。特定の行動や選択を促すことで、個々の自由を制限すると感じる人もいる。
・操作的な性質
ナッジは、人々の選択を操作するという性質があるため、自分の選択を自由に行う能力を疑問視することにつながる可能性がある。
・一時的な効果
ナッジの効果は一時的であることがあり、長期的な行動変化を促すには限界がある場合もある。
・倫理的な問題
ナッジは、誰が何を「良い」選択と定義するかという倫理的な問題を引き起こす可能性がある。特定の価値観や信念を他人に押し付けると解釈されることもある。
のような展開になる場合もありますね、、、、
「諸刃の剣」ですが、「教育・学習」について真正な理論を学び、習得すればデザインや方略にとって間違いなくプラスになると思います。
企業においては、
「行動変容」、「効率性」、「モチベーション」、「学習」、「改善と革新」などの手法として考えてみてもいいのではないでしょうか?
もう「昭和」ではないので、「マイクロマネジメント」なんてやめて、「ナッジ(Nudge)」でいきましょうよ?