louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「学習」における「アンカリング(Anchoring)」について

今回は、”「学習」における「アンカリング(Anchoring)」”というテーマで考えてみます。


「アンカリング(Anchoring)」というのは、大好きなダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」で大々的に広まった選択心理の概念、理論です。


(アンカリング(アンカリング効果:アンカリングバイアス:Anchoring))


・心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって1970年代に提唱された。

認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向をさす。

・係留とも呼ばれる。

・人間の意思決定が必ずしも合理的ではないことを示す一例。

 

これは数多くの引用をされている理論なので、多くの人が知っていると思います。

アンカリング

「アンカリング」「学習」においても発生する場合があります。


・既存の知識がアンカーとなり、問題の本質が見えなくなる。

・知識があるゆえに進歩が阻害される。

・学習初期の誤解が固定化

 学習初期に得た誤った理解がアンカーとなり、その後正しい情報を得ても誤った理解を修正するのが難しくなることがある。

・学習進行の阻害

 最初の情報が強く固定化され、新しい視点や情報に対する開放性が低下することがある。学習が停滞する可能性。

・評価の偏り

 テストの最初の問題が難しかった場合、その後の問題も難しく感じる可能性がある。最初の問題がアンカーとなり、その後の問題の難易度を過大評価してしまう。


などですね?


「ひっかけ問題」にひっかかるというのも、ある意味「アンカリング」の作用だとは思います。


しかし、「学習」ということでは、よくよく考えてみると、前提となる知識が「完全」ではないためにこういった「選択」をしてしまうわけです。


曖昧な知識は、簡単に「アンカリング」を意識し、さらにカオスな知識を不完全に習得し、その後は、、、、めちゃくちゃになりますね?


学習者の、成績が悪かったり、試験に落ちたり、業績が上がらなかったり、ということの原因ともなります。


ビジネスやプロジェクトにおいては、前例や前提を飛ばすこともありますが、「学習」においては、そういったことはほぼ論外です。


・漢字が読めないのに、文章の内容は把握できません。

・算数がわかっていないのに、数学は学べません。

・元素がわからないのに、化学式は理解できません。


だから、インストラクショナルデザイン教育・学習理論では、「完全習得学習」を繰り返し説くのです。


「アンカー」に紛らされることなく、新たな学習を正しく行えるということが重要ですね?


「80点取っているから大丈夫だ!」

というのは、「コントロールの幻想(Illusion of Control)」とも相まって正しいように世間では思われています。


(コントロールの幻想)

・心理学者エレン・ランガーによって1975年に提唱。

・人が自分の力やスキルによって結果をコントロールできると誤って信じる傾向のこと。

・実際には、その結果は確率や偶然であることが多い。

・人は自分が活動的に参加している場合や、選択の機会がある場合、あるいは過去の経験や知識を活用することができる場合など、自分が結果をコントロールできると信じやすい。

 

繰り返し言いますが、

「80点」は「20点」もわかっていないということなのです!

こういう教育・学習では、簡単に「アンカリング」の罠にハマってしまいます。

「学習」というものは、1つずつ、「完全」に、習得していくしかないと思います。