今回は、”「関係フレーム理論(Relational Frame Theory)」と「教育」の関係性 ” について考えてみます。
「関係フレーム理論(Relational Frame Theory)」は心理学の理論であり、スキナー派(?)のヘイズらによって提唱され一般的には、” セラピー ” などの分野で有名です。
心理学の専門的な内容であり、結構難しくてすべては理解できないので、「教育・学習」に関連することだけに絞って考えてみます。
(関係フレーム理論(Relational Frame Theory)
・人間が言語を操り、学習・思考・行動することができる目に見えない知的能力を明らかにしようとする理論。
・言語行動が特定のパターン(関係フレーム)に従って組織されると考える。
・人間の思考や学習、記憶、問題解決などの認知プロセスを理解するためのフレームワークを提供する。
・言葉を通じて環境との相互作用を組織し、理解する仕組みを説明する。単に物事をラベル付けするだけでなく、それらの物事が互いにどのように関連しているか、または互いに比較してどのように異なるかという、より複雑な関係性を理解する能力があるという理論。
(派生的関係反応)
未訓練(未学習)の反応。
① 「相互的内包」
・A<Bという関係性を学習した時にB>Aも理解した
・一方向の学習しかしてなくしても双方向の理解ができる
② 「複合的相互的内包(複合的内包)」
・A<BとB<Cという関係性を学習した時にA<CとC>Aも派生的に理解した
・学習していなくても理解している関係性から派生して新たな理解ができる
(教育・学習分野への適用)
・学習と一般化
一度学んだ情報を新しい状況に適用する能力、一般化のプロセスを説明する。学生が一度学んだ数学的な原則を、新しい問題解決に適用すること等。
・言語獲得
言語獲得のプロセスを理解するのにも役立つ。学習者は、特定の単語やフレーズが特定の対象や状況と関連しているという「フレーム」を学ぶ。
・問題解決
問題解決のスキルを教える上で有用。問題を構成する要素とそれらの間の関係性を理解し、それらの関係性を変更または操作することによって新しい解決策を見つける能力に関連している。
・社会的・情緒的学習
自分自身や他人の感情、信念、意図などを理解するための「心の理論」の獲得にも関連している。
(関係フレーム理論のメリットとデメリット)
(メリット)
・言語と認知
は言語と認知の関連性を説明する強力なフレームワークを提供する。言語の獲得や認知的プロセスを理解するための新たな視点が生まれる。
・応用可能性
は教育、心理療法、自閉症の治療など、様々な分野で応用が可能。それぞれの分野において効果的な戦略や介入を開発することが可能になる。
・行動分析の枠組み
行動分析の枠組みに基づいているため、具体的な行動の観察と分析により理論を検証することが可能。
(デメリット)
・抽象性
は非常に抽象的な理論であり、理解や実装が難しいと感じる人もいる。この理論を理解し、実際に応用するためには専門的な知識が必要となる。
・研究の限定性
比較的新しい理論であり、その有効性や効果を確認するための研究はまだ十分には行われていない。その全ての側面について確固たる結論を出すのは難しい状況にある。
・個々の差異の考慮
人間の認知と行動の一般的なパターンを説明しますが、個々の人間の違いや特性を十分に考慮していないという批判もある。
ということです。
セラピーの分野では、ACT(Acceptance and Commitment Therapy)として、不適応状態に対する心理療法が行われていて、思考や感情を受け入れ、自分の価値に合った行動がとれるようにする方略が使われているようです。
「言葉」や「思いこみ」というのは、人間にとって行動を起こしたり制御したりする重要なファクターなので、それぞれの関係性を理論化した「関係フレーム理論」はなかなか面白いと思います。
人間である限り、あらゆる固定観念を捨て去るということはできませんが、物事の「関係性」を考えてみることは「教育・学習」にとっても効果があると思うのです。
他の分野と比べて、心理学が科学になってからの歴史はまだまだ浅いため、今後も新しい理論が出てきて、今の理論が覆されることもあるでしょう。
「教育心理学」という分野には、少しだけ胡散臭さを感じたりもしますが、それでも日々進歩したり後退したりしているようです。
「学習」においては、「評価」という目に見えるモノが絶対的正義ですが、「目に見えることだけがすべてではない」、、、という世界も、様々な要因で繋がっているということですね(あまりそちらの世界に寄りすぎると本末転倒となってしまいますが・・・。