louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「理解のための指導( TfU(Teaching for Understanding) 」

今回は、「理解のための指導( TfU(Teaching for Understanding) 」について考えてみます。

 

その前に、「理解」とは何でしょう?

 

インストラクショナルデザインで考えると、

・「知的技能」が使えること

 

ということではないでしょうか?

・「言語情報」=記憶(暗記)

・「知的技能」=応用


つまり、” 知識を応用できるレベルのこと” 「理解」だと思います。


「暗記」との違いは、

「暗記」は、情報をそのまま記憶に刷り込むことで、特定の事実やデータ、または手順を正確に記憶するということで、その情報がなぜ重要であるか、それが他の情報とどのように関連しているかなどは含みません。

「理解」は、知識を応用して新しい課題に対応できるということ。情報がなぜ重要であるか、それが他の情報とどのように関連しているかを認識しているかということです。


さて、そこで、「理解のための指導( TfU(Teaching for Understanding) 」という考えがあります。考えというよりフレームです。


「TfU」は、ハーバード大の有名な教育研究プロジェクト(?)である「PROJECT ZERO」で考えられました。


「PROJECT ZERO」は、

1967年秋、ハーバード大学教育学の大学院で、哲学者ネルソン・グッドマンの指揮のもとに創立された学際的研究グループ。全米科学財団、連邦教育局、全米教育研究所、スペンサー財団などから多額の援助を受け現在に至っている。このプロジェクトの特徴は、研究の対象を単に教育学のみに限定せず、哲学、発達心理学認知心理学、神経学、数学、教育、芸術など広範囲にわたる学問領域からのアプローチを試みていること。

理解のための指導( TfU(Teaching for Understanding)

「理解のための指導( TfU(Teaching for Understanding) 」については、鈴木先生の解説がありましたので、それを見ていきます。


「TfU(Teaching for Understanding)」は、


学習者が(現在と将来の両方において)有意義で、テスト後も続く学習に取り組むようにするにはどうすればよいか。教育者との共同研究を通じて開発されたフレームワーク

教師や大学教授、カリキュラム開発者などが活用対象者であり、学習者が『理解のための学習活動(Understanding performances)』を行うように授業を設計・開発することが目的。

ハーバード大学大学院教育学研究科のPROJECT ZEROにおいて何年間にも渡り、学校の教師と共に実践を重ねて作られた。

「理解」の重要性を説いており、「理解」は教育の成果としてすべての学習者に求められる基本であると位置づけている。

「理解」を導くための授業を設計・開発するために作られたのがTfUです。

「理解が優先される学習」はどこにでも適しており、授業実施前、実施中、実施後にTfUフレームワークを当てはめてみて、必要なものは何かを確かめたり、自分の教授法が正しいものだったかを認識したりする、という使用法が考えられる。


TfUフレームワーク4つのカテゴリー『発展性のある題材』『理解のための目標』『理解のための学習活動』『学習中の評価』から構成。


1. 発展性のある題材(Generative topics)

『発展性のある題材』を考えることは、教師やカリキュラム開発者が、豊富で啓発するような題材が選択できることを支援。『発展性のある題材』の選択基準には以下の4つがある。

・専門領域の中心となるもの

例えば、「体の関節」という題材を考えた場合、自動車を学習する時は台車の部品と捉えることができる。スポーツや医学的な内容を学習する時は、人体の関節と捉えることができる。このように「体の関節」という題材は様々な分野における中心的なものと捉えることができる。

・学習者にとって利用しやすくおもしろいもの

学習者にとって利用しやすく、おもしろい題材であれば、学生は熱中しつつ、効果的に題材に取り組むことができる。

・教師にとっておもしろいもの

題材に対して情熱を持っている教師は、より熱意を持って、想像的に取り組む。その題材の準備を念入りにして、学生を真剣に取り組ませ、深い学習を行わせることができる。

・種々の専門領域や文脈へつながりやすいもの

良い発展性のある題材とは専門領域を越えて、様々なテーマに関連させることができ、「底なし」の特徴を持っている。


2. 理解のための目標(Understanding goals)

『発展性のある題材』を考ると、多くの題材が出てくるため、焦点を絞るために『理解のための目標』が必要となる。『理解のための目標』の基準には、以下の3つがある。

・明白で誰にでもわかる目標

分かりやすい目的は、公共性という特徴を持っている。黒板に書いたり、プリントとして配ったりすると目標と一緒に学習全体像も把握することができる。

入れ子にされた目標

TfUフレームワークを使った教授活動が、半年間や1年間という期間に渡る場合、目標が複数設定され入れ子になる。 

・専門領域の中心となる目標

専門領域の中心となる目標を保持するには、「専門領域内の内容知識」「専門領域内の方法」「専門領域の目的」「専門領域内の表現」の4つの視点でチェックすることが大切。


3. 理解のための学習活動(Understanding performances)

『理解のための学習活動』には特徴が二つある。計画された学習活動には学習者の(1)現段階の理解を表示することと、(2)理解を進めること。『理解のための学習活動』を選択するために5つの基準が設けられている。

・理解のための目的に直接つながるもの

『理解のための学習活動』は、授業の単位ごとに決められた『理解のための目的』につながる必要がある。

・練習を通しての理解の発展と応用

具体的な活動としては、学生が草案を書いたり、批判したり、さらに訂正したりすること。

・多様な学習スタイルや形の表現の確保

グループ学習、個別学習どちらにおいても、理解のための学習活動は異なる学習スタイルや表現を認める。

・挑戦的で、取り組みやすい作業における熟考した取り組みの促進

『理解のための学習活動』はただ行動するだけではなく、しっかり考えることを要求すべき。ただ親しみやすい学習活動だけではなく、試行錯誤させるような学習活動も必要。

・誰にでもわかる理解の明示

学習者は自分自身がしていることを把握するためにも、学習活動は可視的である必要がある。他の人(同僚の学生、教師、親)はフィードバックを提供できるような位置にいる必要がある。


4. 学習中の評価(Ongoing Assessment)

学習者は有益なフィードバックを受けることで学習活動を洗練することができる。学習中の評価は教師や開発者に学習過程において常に素早く有益なフィードバックをする計画を立てることを求めている。『学習中の評価』設定の基準として以下の4つが挙げられている。

・明白で誰にでもわかる適切な基準

学習活動のために、明白な基準を持つことは学習者を非常に助けます。例えば、ルーブリック(rubric)を作成すると明白な基準を示すことができる。

・高頻度の評価

学習中にはさまざまな形で評価が常に行われていることが大切。

・フィードバックの多様な情報源

グループの仲間同士の議論の中にあったり、家で親と話している中でなどフィードバックは教師だけではなく、他の学生や親などからもなされる。教師は評定をつけるといった公式のフィードバックも行う必要もある。

・進展の測定をしたり計画を満たしたりする評価

進行状況を評価することや、計画を活気付けることが『学習中の評価』には必要。教師は、個々の学生がどのようにうまく学習活動を行っているかを見ることで、彼らの特有のニーズに対応することができる。クラス全体がどのように動いているかをよく見ることによって、緊急な問題に対処したり、新たに察知したチャンスを汲み取ったりすることができる。


さすがに、賢い人たちが集まれば、こういうことになりますよね? という内容です。


勿論、この方略を学んだとしても、すべて実施することはなかなかハードルが高いですが、インストラクショナルデザインの考えや、その他の様々な教育理論などを踏襲して(というより、当たり前に考えたら、こうなるのですが、当たり前に考えられる人の方が世の中圧倒的に少ないので、、)、いると思います。

 

ハーバードのホームページを見ると、「PROJECT ZERO」は今も続いているようで、ほんとうに素晴らしいですね! (日本では、熊大教授システム学専攻は崩壊してしまいましたが、、、)。


しかし、世界で一番有名なハーバード大がこういうことをやっても、「教育」が変わらない、、、、、ということです。