「教育」は、基本的に「認知能力」を学習者が高めることを目的としたものだと思っています。
数値化でき、具体化できるので、その効果と効率を可視化することができます。
一方で、「非認知能力(Non Cognitive Skills)」というモノも注目されています。
「非認知能力(Non Cognitive Skills)」は ” 幼児教育 ” の分野でよく取り上げられていたコトなのですが、教育関連企業は少子化の世の中で、やはり社会人相手でないと経営を持続できないため、無い頭を絞った挙句、最近では企業内教育にも、、、と、浸食(?)してきています。
ということで、今回は、”「非認知能力(Non Cognitive Skills)」を高める研修??? ” について考えてみます。
(非認知能力(Non Cognitive Skills))
・アメリカの経済学者、ジェームズ・ヘックマンの研究によって提唱された意欲やコミュニケーション力といった数値では測れない能力のこと。
・知識や技術といった認知的なスキル以外の、個人の行動や態度、性格などを指す能力。
・自己管理能力、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、創造性、批判的思考能力などが含まれる。
・人間の社会的、情緒的なスキルや特性を表す。
・個人の成功にとって非常に重要であり、職場でのパフォーマンス、人間関係、メンタルヘルスなど、様々な面で影響を与える。
・非認知能力は生涯を通じて育てることが可能であり、教育やトレーニングを通じて向上させることができる。
(非認知能力を高めることによるメリットとデメリット)
(メリット)
・コミュニケーション能力や問題解決能力などの非認知能力を高めることで、人間関係が円滑になり、職場や学校、家庭などでのパフォーマンスが向上する。
・非認知能力はストレス管理や自己調整の能力にもつながるため、メンタルヘルスを保つことにも寄与する。
・自己理解が深まり、自己肯定感が向上する可能性がある。自己効力感を高め、目標達成に向けた自己調整能力を高めることにつながる。
(デメリット)
・非認知能力を高めるための訓練や教育は時間と労力を必要とする。他の重要なタスクや活動から時間を割く必要があるということを意味する。
・個々の性格や経験に大きく影響されるため、自己改善の過程で困難やストレスを経験する可能性がある。
・非認知能力を過度に高めると、自己中心的になる、他人の意見を無視する、過度の自己評価など、調和のとれた人間関係やコミュニティに悪影響を及ぼす可能性もある。
とされています。
ジェームズ・ヘックマンは、就学前に子どもの「非認知能力」を育てることが重要と説明し、「大人になったときに経済的に成功するためには、幼少期にどう過ごすかが重要である」と主張して、ノーベル経済学賞を受賞したそうです。
「経済的な成功?」
これに誰もが飛びついたわけですね、、、、
「MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)」や「VARK」、「DiSK」などと絡めて、”「非認知能力(Non Cognitive Skills)」を高める研修 ”を次々と生み出してくるわけです。
一例をあげると、
・エモーショナル・インテリジェンス研修
感情の理解や管理、他人の感情への理解や対応能力を高める研修。EQ(Emotional Quotient)とも呼ばれ、リーダーシップやチームワーク、顧客対応などに大きく影響する。
・コミュニケーションスキル研修
効果的なコミュニケーションの方法を学ぶ。聞く力、話す力、非言語コミュニケーション、対人関係スキルなどが対象となる。
・リーダーシップ研修
自己管理、他者の指導・支援、ビジョン設定、意思決定などのリーダーシップに必要な非認知能力を高める研修。
・マインドフルネス研修
自己認識、集中力、ストレス管理を高める研修。マインドフルネスは、自己の心と体の状態に意識的に気づくことで、自己理解と自己調整能力を向上させる。
・プロジェクト管理研修
問題解決、意思決定、時間管理、チームワークなどの非認知能力を高める研修。
みたいなのが今も日本中の企業で行われていると思います。
更には、
「非認知能力を高めると、「学力」「就職率」「年収」「マイホーム購入率」などが高まることが明らかになっています」
などとわけのわからないことを言って、そのためには
・メタ認知や内省力を高める
・伸ばしたいスキルに対して型をインプットする
・具体的な目標を設定する
・人から積極的にフィードバックを受ける
・メンタリングやコーチングを活用する
” 高額な ”「研修」が必要です!
と煽りまくるわけです。
何せ、「経済的な成功」が見込まれるのですから、企業も社員も”Win-Win” で、教育関連企業も " Win " ということです、、、、、。
いやいや、そんなわけないですよね・・・
また、元々のヘックマンの言う理論が正しいとすれば、
・5歳までの教育は、学力だけでなく健康にも影響する
・ふれあいが足りないと子の脳は萎縮する
”大人になってからは何をやってもムダだから”、幼児期に「非認知能力」を高めることをやりましょう、、、と矛盾がおきますね?
まぁ、何もかもが具体化されない感覚的モノなので、どんなことでも ” 言ったもの勝ち ” の世界です。
別に、そういった ” 研修 ” のすべてがムダだとは思いませんが、そんな不確かなことを期待するより前に、” 真正な教育・学習 ” のことを考えて「認知能力」を高めることが重要ではないかと考えるのです。
今ではかなり怪しい雰囲気になってしまった「マインドフルネス」も息抜き程度にはいいように思います。