今回は、研修や企業内教育でよく使われる ”「ジョブ・クラフティング(job crafting)」や「経営者目線」” について考えます。
(ジョブ・クラフティング(job crafting))
従業員一人ひとりが仕事に対する認知や行動を自ら主体的に修正していくことで、退屈な作業や“やらされ感”のある仕事を“やりがいのあるもの”へと変容させる手法のこと。
会社や上司の指示・命令ではなく、働く人々が自分自身の意思で仕事を再定義し、自分らしさや新しい視点を取り込んでいくことで、モチベーションが高まり、パフォーマンスの向上につながるという考え。
・作業クラフティング
仕事のやり方を工夫して仕事の内容を充実させることを目指す。
・人間関係クラフティング
仕事で関わる人への接し方、コミュニケーションを工夫して良好な人間関係を築き、仕事に対する満足感を高める。
・認知クラフティング
仕事の捉え方や考え方を工夫し、仕事にやりがいを持てるようにする。
といった感じです。
「やりがい」とか「やらされ感」というキーワードは、こういったモノの基本中の基本ですね?
「やりがい」「やらされ感」、、、そういうワードを聞かされると、
「確かに・・・・」
「そうだなぁ・・・」
と思う人も結構いるのかもしれません。
ところが、こういった研修や話を真に受けて、クラフティングなどしようものなら、、、いきなりのストップがかかります。
それはそうです、会社においてはそれぞれの地位、役割があるわけですからね?
こういった研修や企業内教育を受けさせる目的は、当然のように「モチベーション、生産性の向上」を期待して、だと思います。
しかし、本当にこういった考えを持たせるには、そういったことができるだけの役職、ポジションが必要になります。
つまり、コーチングと同じで ”経営層だけ” に実施すればいいことです。
それを、「管理職研修」の中に入れたり、その研修で受けた内容をそのまま自分のチームや部下に、、、などということをするから逆の効果(モチベーション、生産性低下)を招くわけです。
また、「ジョブ・クラフティング(job crafting)」と同じように「経営者目線」というのも一般の社員に対して発するコトバではありませんね?
(経営者目線)
企業を経営する人の立場に立って物事を考えたり、行動したりすることを指す。 例え現在経営者でなかったとしても、自身の身の回りや目の前の事だけでなく、俯瞰して全体の状況を把握した上で最も成果につながる行動を取ることが経営者目線を持って仕事に取り組むこと。
社員の「全員経営」なんていうトレンドもありましたね?
もしも、社員の多くが「経営者目線」で仕事を考え、実施したとしたらどうでしょう?
恐らく、その会社は1か月も持たずに破綻するでしょう?
会社において「経営者目線」で物事を本気で考えるのであれば、
経営者と同じだけの年俸を与えないと
意味がありませんし、そういったことができる会社は世界でどこにもないはずです。
普通に考えれば、「ジョブ・クラフティング(job crafting)」や「経営者目線」などという考えには至らないと思うのですが、なぜこういったモノがトレンドになったり、実際に研修や企業内教育で行われるか?
答えは、あまりにも簡単です。
ビジネスマナー同様、
目新しい研修や教育を行うことが商売になる
からです。
21世紀ももう20年以上経つのですから、、、そろそろこういったことが ”マヤカシ” であるということに気づいてもいいと思うのですが、
世の中はまだまだ事例主義、後追い、、、の文化が蔓延してしまっています。
・価値観の共有
・社員が主体的に行動できる環境を整える
などというのは、あくまで ”経営者” と ”研修会社” のメリットを最大にする陳腐な考えだということです。
社員の”モチベーション”、”生産性”を上げたいのであれば、
「”給料”を上げればいいだけ」
です!
などというと、
「そんな効果は一時的だ」
「いくらお金を貰っても、やりがいのない仕事などやりたくない」
「QOLが一番大切」
といった反論が必ずあります。
年俸1億円の役員が1.5億円になるのと、
1千万円もらってる社員が1千5百万円になるのと
は ”全く意味合いが違う” ということを誰も語りませんし、
”お金” のことを語るのは下品だ、、、みたいな文化がある限りは、今後も「ジョブ・クラフティング(job crafting)」や「経営者目線」、「やりがい」などという ”精神論” 的なアプローチが世に蔓延るのだと思います。