louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「ネットで検索したら?」は「足場かけ(Scaffolding)」になるのか?

昔と違って、今の時代は「情報」に溢れています。

スマホPCで検索すると、よほど専門的なことでなければ大概の情報はすぐに得られます。

 

「教育」を担当する人たちも、当然それはわかっているので、


「ネットで検索したら?」


安易なアドバイスをしますね?

 

そして、学習者はネットを検索し、「答え」を見つけます


学習者としての、”「問題」に対して「答え」を見つける” という「方略」は決して間違っていません。


本や辞書をひこうが、ネットで検索しようが、友達の答えを盗み見しようが、同じことです。

 

「Aという問題に対しての答えBを回答できる」

 

ということが「学習目標」であるのなら、学習者としては目標を達成しています。

 

小学生でさえほとんどがスマホを持ち、学校では一人一台のPCが制限はあるにしても使える時代になっているのですから、「ネットで検索する」ということは極当たり前のことです。


そういうと、巷でよく言われる、

「知識と情報は違う」

「情報」をいかにして自分の「知識」とするか? 

みたいな議論は、また別の「方略」の話なので、今回はそういうことを記すのではありません(「知識」と「情報」が違うのは当たり前ですよね?)。

 

今回は、「ネットで検索したら?」は「足場かけ(Scaffolding)」になるのか?

ということについて少し考えてみます。

足場かけ(Scaffolding)

(足場かけ:Scaffolding)とは、

 

・ウッド、ブルーナー、ロス(1976)によって提案された概念であり、学習者とそれより有能な他者との間で作業を共有することで、学習者だけでは計画・実行できない課題を行うこと、その経験から学ぶことを可能にするもの。

 

教育心理学者のレビ・ヴィゴツキーによって提唱された「ゾーン・オブ・プロキシマル・デヴェロップメント(近接発達領域)」という概念に基づいている。

 

・「ゾーン・オブ・プロキシマル・デヴェロップメント」は、子供が自分で解決できる問題と、大人やより能力の高い子供の助けを借りて解決できる問題との間の領域を指し、この領域が「足場かけ」の場となる。

 

・具体的には、教師や指導者が学習者のために「足場」を設けることで、学習者が自分自身では難しい課題に取り組むことを助ける。そして、その課題が解決できるようになったら、徐々にその「足場」を取り払っていく。

 

・学習者が自立して学習を進めるための自信をつけるだけでなく、問題解決能力や批判的思考力を育てるのにも効果的。

 

・文章作成の課題において、最初は教師が文章の構成や表現方法を示す「足場」を設けることで、学習者は文章を書く技術を学ぶ。その後、教師は徐々にその助けを引き揚げ、学習者が自分自身で文章を書けるようになることを目指す。

 

・学習者が次のステップへと進むための「橋渡し」の役割を果たす重要な教育手法。


ということで、

「心理学」「教育」「教育工学」「インストラクショナルデザインで非常に重要な考えです。


そこで試しに、

「ネットで検索したら?」は「足場かけ(Scaffolding)」になるのか?

ネットで検索してみると、


・「ネットで検索したら?」と教育において指示する行為は、「足場架け」という教育法の一つに当てはまる。

・「足場架け」は、教師が学習者の思考や行動に対して支援や助けを与え、より高度な学習や認知を可能にする手法。

・「ネットで検索したら?」という指示により、学生は自分で情報を探し出す力、それを分析・評価する力、そして必要な情報を選び出す力を養うことができる。このように、教師が適切な指示や質問をすることで、学生の学習プロセスを支え、自立的な学習を促進することが「足場架け」の目的。


となります。


しかし、ほんとうに

「ネットで検索したら?」は「足場かけ(Scaffolding)」になる

ということに少し疑問があるのです。


なぜなら、「ネットで検索」という行為自体に対する働きかけは、確かに「足場かけ」だとは思います。


しかし、殆どの場合、ネットにはその「答え」があります

つまり、「答え」を教えていることに他ならない、、、と思うのです。


ネットにない「答え」を、ネットの情報をもとに考え、自分の「答え」を作り出すということであれば、それは「足場かけ(Scaffolding)」でしょう!

もし、「教える側」がそういう意図で「ネットで検索したら?」というアドバイスを与えるのであれば、全く問題がないと考えます。

 

でもほとんどは違いますよね?

 

少しだけインストラクショナルデザインや教育理論を齧った人たちは、

「何を使ってもいいんだ!」

と言うでしょう。

 

そう、学習者自身が「ネットで検索」すれば、学習目標を達成できると考え、「答え」を見つけるのであれば、「何を使っても」いいのです。

 

ただ、「教育」としては「答え」の在りかを教えるのは間違っているし、「学習」にはならない、、、と考えます。


「ネットで検索したら?」

という安易なアドバイスは、「足場かけ(Scaffolding)」になってません よ、、と思うのです。