louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「学習のアフォーダンス(affordance)・シグニファイア(signifier)」について

今回は、”「学習のアフォーダンス(affordance)・シグニファイア(signifier)」” について考えてみます。


アフォーダンス(affordance))


認知心理学者のジェームズ・ギブソンによって提唱された”環境が動物に与え,提供している意味や価値”という概念。

・人間は環境の中に実在する意味や価値を直接知覚すること,情報をピックアップすることで、行為することができるという生態学的な見方。

・物事がもつ「可能性」や「機能」のこと。

・「モノ」と「人間」の間に生じる、行動における関係性。

・人間や動物が物事をどのように理解し、どのように行動するかを説明するために用いられる。

・周囲の環境が我々に提供する意味や価値といった情報。


ということで、上記の内容は多くの分野で考慮され、取り入れられている概念ですね?


「教育・学習」の文脈においては、


・学習者が教材や環境から得られる”学習の可能性”を指すこと。

・学習や知覚能力を広げるテクノロジーの性質や働き

などと、とらえられることもあります。


そして、4つの分類をする場合もあるようです。

・認知的アフォーダンス

 >どのように人が学習するのかに関連した基準を網羅する

・社会的アフォーダンス

 >共有された人間の活動に関連した基準を網羅する

・情緒的アフォーダンス

 >学習の動機づけの側面に関連

・経済的アフォーダンス

 >教育理論や実施に関連するリソース(資源)や他の現実的な問題に関係


アフォーダンス”教材や環境” が提供する「学習の可能性」を評価するための重要な概念であり、学習者にとって最適なアフォーダンスを提供できるようにデザインすることが必要だということですね?

 

ただ、当然のようにアフォーダンス個々の学習者によって評価が異なります

 

視覚的な情報を好む学習者にとっては、視覚的な要素が豊富な教材は視覚的な学習のアフォーダンスが高いですが、テキスト情報を好む学習者にとっては、その逆になってしまいます。

学習のアフォーダンスは、”教材や環境” が提供する「可能性」なので、それがどの程度活かされるかは、学習者の個々の能力や嗜好に依存するということです。


一部の学習者にとっては高いアフォーダンスを提供する教材や環境でも、他の学習者にとっては低いアフォーダンスしか提供できないという、、、

アフォーダンス

では、「シグニファイア(signifier):知覚のアフォーダンス理論」は?


(シグニファイア(signifier))


・対象物と人間との間のインタラクションの可能性を示唆する手掛かりのこと。

・デザイン用語としては、アメリカ合衆国認知科学ドナルド・ノーマンによって提唱された。

・モノが人に対して与える行動の手がかり。

・人を特定の行動に誘導するためのヒント。

アフォーダンスの考えをデザインに応用し、“アフォーダンスによって我々が身の回りの製品の使い方を左右される”という概念。


アフォーダンスとシグニファイアの違いは、

 

”周囲の環境が我々に提供する意味や価値といった情報”がアフォーダンスであり、このアフォーダンスをデザインに応用したもの”がシグニファイアである

ということですね。


個人によって受け取り方が違うという前提があるので、「この場合はこう」、「違う場面ではこう」、、ということはなかなか難しいですが、教材や環境をデザインする際には、ある程度このようなコトを考えてみるというのもアリかと思います。


シグニファイアはWebデザインにもよく考慮・適用されますね?

 

マニュアルレスが当たり前になったネット世界での学習においては”UI”をいかに学習しやすいように作成するか? ということも結構重要ですね?


また、以前に記した「ナッジ(nudge)」”シグニファイアを用いて人に特定の行動を促す” ことですね。


アフォーダンス → シグニファイア → ナッジ」

といったところでしょうか?


「教育・学習」の世界から少し離れて、「心理学」界隈を散策してみることから得られることもあるかもしれません。


因みに、元々の「シグニファイア」は、言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが提唱した言語学上の概念で、「言葉や記号」と「その表す意味」との関係。 特定の言語や文化圏で「共通の意味」を持つ記号や言葉のこと。「人の行動を正しく誘導するためのサイン」を意味します。


ソシュールといえば、、構造主義に大きなヒントを与えたことで有名ですね?


やはり「心理学」だけでなく「哲学」にも目を向けると面白いですね?