louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「GBS(Goal-Based Scenario)」について ~ 「学習目標」を提示した方が”いいのか?””よくないのか?”論争 ~

誰も論争をしているわけではないのですが、、、、

 

自分の中で少し引っかかるところがあった為、

 

今回は、「学習者」に「学習目標」を提示するか、しないか、と「GBS(Goal-Based Scenario)」について考えてみます。


インストラクショナルデザインの基本的な考えとして、

 

・真正な「学習目標」を作成し、学習者に提示する

 

ということがあります。


これは、学習者がこれから何を学び身につければいいのかを知った上でインストラクションを受ける(学ぶ)ということが、学習にとってメリットがあるという考えで、至極当たり前のことです。


真正な「学習目標」を作成できる人があまりに少ない、、、という事実は、今回は考えないことにして、)


ところが、GBS(Goal-Based Scenario)では、「学習目標」を提示しないというより敢えて隠して、行動、学習した結果、達成すべき知識・スキルの習得をさせるという考え方ですね。


さて、どっちがいいとか悪いとかの話しではなく、当然これもケースバイケースだし、学習する内容、学習環境によって適用できたり、ムリだったりするわけですが、、、


GBS自体は結構古い理論ですが、いまだに多く適用されているということは成果を出した例が多くあるということなのでしょうね?
アクセンチュアが有名)

GBS(Goal-Based Scenario)

では、GBSについて。


GBS(Goal-Based Scenario)とは,

 

行動することによって学ぶシナリオ型教材を設計するためのインストラクショナルデザイン理論であり,R. C. SCHANKによって提唱された。

 

SCHANKの人工知能における研究をベースとし,現実的な文脈の中で「失敗することにより学ぶ」経験を擬似的に与えるための学習環境として物語を構築するための理論.

 

ゴール(対象スキル)を学習者に明示するのではなく,使命を与え,カバーストーリーや役割といったシナリオの文脈によって,学習者に使命を達成する必要性を提示することによって,シナリオを読み進めながら,自然に知識やスキルを身につけて行くような設計が特徴。

 

熊大でかつて実施されていたSCC(Story-centered Curriculum:ストーリー型カリキュラム)ベース理論はGBSで、その違いは、

 

・GBSはひとつの科目や教材に活用される

・SCCはカリキュラムレベルに活用される

という点ですね。

 

また、「シミュレーション」環境をコンピュータ上に作成し、その中で現実の職場で起きる様々な問題や課題を経験し解決していく。

というコンピュータ(ハード&ソフト)ありきの考えなのですが、実際の適用例ではすべてをシャンクが考えたようにはやっていないでしょう(膨大な費用がかかる)が、まぁ、考えとしてGBSを元に、、、ということだと思います。


GBSの構成要素は、


(使命)

・学習者が達成しようとする目標.以下の要素を含んでいる必要がある

・学習者がやる気になり,達成しようと思う 

・学習に入り込み易い様に,学習者がすでに知っていることや興味があることと関連付けられている 

・学習目標内(ゴール)となるスキルや知識を使わせるものである


(カバーストーリー)

・使命を現実的な課題として位置づけるために用意する導入的文脈 

・話の中に,設計者側が教えたいと思うスキルを活用し,知識を探し出す十分な機会が設けられている

・話は面白みがあってやる気を与えるものである

・一貫性があって現実的な内容である


(役割)

・学習者がカバーストーリーの中で演じる人のこと

・必要とされるスキルを学習するのにもっとも適した役がシナリオから選ばれる必要がある

・学習者が演じる役割は特定されていることが重要


(学習目標)

・設計段階で定義されるが,学習者には目標として明示することはしない

・学習者に何を学んで欲しいかはっきりさせることが重要であり学習目標は以下の二つに分類

・プロセス知識:目標達成に必要なスキルをどのように訓練するかの知識 

・内容知識:目標達成に必要な情報


(シナリオ操作)

・学習者が使命を達成するために行うすべて作業

・使命と学習目標の二つが密接に関連付けられている

・学習者相互,もしくは教材のやり取りを通して学習者が結果を出せるように構成されている

・学習者が正しい情報を選択した場合は成功,正しく選択できなかった場合は”失敗”という結果を与える

・学習者が練習できる場をできる限り多く用意する


(フィードバック)

・適切なコンテンツの中で設定され,適切なタイミングで提供

・学習者が対象領域の内容とスキルを学習する場面に設定される

・行動による結果  

・コーチを通して 

・類似経験を持つ領域専門家の話を通して


(情報源)

・学習者が使命を達成するために必要とする情報

・学習者が使命を達成できることを支援するように,簡単にアクセスでき,良く構成された情報を十分に用意する

・学習者自身が望んだときにいつでも,情報を入手できるように設定する


GBSメリットデメリットは、

 

(メリット)

 

・実用的な学習

実際の職場や生活に即したシナリオを提供。学習者は理論的な知識だけでなく、それを実際の問題解決に適用する方法も学ぶことができる。


・高いモチベーション

学習者は自身の目標を達成するために、自身で学習を進めることができる。自己効力感を高め、学習へのモチベーションを向上させる。


・フィードバックと反復学習

学習者に継続的なフィードバックを提供。学習者は自身の理解を深め、スキルを磨くことができる。

 


(デメリット)

 

・時間とリソース

作成には多くの時間とリソースが必要。現実的なシナリオを作成し、適切なフィードバックを提供するためには、専門的な知識と経験が必要となる。


・個別のニーズへの対応

一般的なシナリオに基づいているため、個々の学習者の特定のニーズや目標に完全に合わせることは難しい場合がある。


・技術的な制約

多くのテクノロジーを活用するが、すべての学習者がこれらの技術にアクセスできるわけではない。技術的な問題が学習の障害となる可能性もある。


構成要素やメリットを見てみると、やはりゲーム感覚な感じがしますね?

 

このような「学習」がちゃんとできれば、確かに「学習目標」を事前に認知する必要もないかもしれません、、、


また、現実では”失敗”はしない方がいいという考えですが、”失敗”をシミュレーションの中で経験するという考えには賛同します。

 

こうすれば失敗するから、、、というのがわかっていればいいですからね?

 

通常のロープレなんかでは”成功”だけを学べますが、”失敗”の実態を学ぶというのはイイ考えだと思います。