企業において「学習契約(learning contract)」ということが、たまに実施されることがあります。
大抵は、「英語教育」や、大学の博士課程で「Ph.D」、「MBA」等ですね?
”TOEICで何点以上”、”Ph.D” や ”MBA” といった資格を取ることを条件に、企業はお金を出す際に「契約」を行います。
少し前に流行って、今やもう誰も口にしなくなった「リスキリング」でも様々な「学習契約」が行われたことでしょう。
確かに、会社と従業員の「契約」も「学習教育」に違いはないのですが、
一般的には「教える側」と「学習者」の間での取り決めで、よく使われるコトバだと思います。
(学習契約(learning contract)
・教育者と学習者の間で締結される契約で、学習者が何を学び、どのように学ぶかを明確にする。
・学習者が自分自身の学習目標を設定し、その目標を達成するためにどのような方法を使用するかを定義することを可能とする。
(学習契約の要素)
・学習目標:学習者が達成したい具体的な目標や結果。
・学習活動:目標を達成するために学習者が取り組む活動やタスク。
・評価基準:目標が達成されたかどうかを判断するための基準や指標。
・フィードバックと改善:目標達成の進行状況を評価し、必要な改善策を特定するプロセス。
学習者が自分自身の「学習プロセス」をコントロールすることで、自律性、能動的な「学習」を行うことを目的としています。
「数学のテストで100点取ったら、小遣いを1000円アップ」
などというのも、「学習契約」の一つですね。
メリット、デメリットは以下のようなものです。
(メリット)
・自主性と責任
学習者に自分自身の学習プロセスを管理する機会を提供。自己啓発と自己効力感を向上させ、学習者の責任感を高める。
・個別化された学習
個々の学習者のニーズ、興味、目標に合わせてカスタマイズできる。学習者は自分にとって最も関連性のある内容を学ぶことができる。
・自己評価と反省
学習者に自分自身の進捗を評価し、学習目標を達成するための改善点を特定する機会を提供。
(デメリット)
・時間と労力
適切な学習契約を作成するには、学習者と教育者の両方から見てかなりの時間と労力を必要とする。
・適切なガイダンスの欠如
学習者が自己指導型の学習に慣れていない場合、適切なガイダンスがなければ学習契約は効果的ではない。
・不均等な学習経験
個々の学習契約は学習者間で学習経験が大きく異なる可能性があり、これは一部の学習者が取り残される可能性がある。
・評価の困難
学習者がそれぞれ異なる目標を持っている場合、教育者が公平に評価することが難しい。
私的には「学習契約」という概念をもっと広めたいと思っています。
企業において、TOEICで何点以上、Ph.DやMBAといった特殊なことだけではなく、企業内教育全般にそれぞれ「学習契約」をするべきだと思うのです。
”教育界における、「内発的動機づけ“神話”の崩壊」について” で詳しく記していますが、
「学習」を促すには、「内発的動機づけ」の前に、「外発的動機づけ」が必須です。
「学習契約」は「外発的動機づけ」になります。
学校教育でも単位が取れなければ、「留年」「退学」という「学習契約」があるように、
企業内教育においても「学習契約」をして、業務に必要な知識やスキルが習得できなければ、「減給」「降格」「解雇」といったことがあってもいいはずなのです。
勿論、優秀な成績であれば「昇給」「昇格」というベネフィットも必要です。
企業の場合、「上司の口約束」が横行していて、実績を上げたのにベネフィットがないということがよくあります。
しかし、「教育」の重要性がわかっていない日本企業の経営層は、そういったことに全く関心がありません。
せいぜい「英語好き」のCEOが「社内公用語を英語」にするくらいのものですね?
意味のない「社内公用語の英語」はどうでもいいのですが、日々行っている「企業内教育」で「学習契約」を行えば、間違いなく業績は上がるのではないでしょうか?