21世紀になってすぐに、リチャード・E・マイヤーが提唱した「マルチメディア教材デザインの7原理」が話題になり、e-Learning を行う際の基本概念のように扱われたことがありました。
今でも e-Learning業者などでは結構自慢げに話す人たちもいます。
ということで、今回は ”「マルチメディア教材デザインの7原理」の前に” をテーマで考えてみます。
(マルチメディア教材デザインの7原理)
マルチメディア教材デザインの7原理は、教育学者であるリチャード・E・マイヤーが提唱した教材設計に関する理論。
インタラクティブな学習環境を作るためのガイドラインとなっており、学習者が情報を効果的に理解、記憶、適用できるようにすることを目指している。
1.マルチメディア原理(Multimedia Principle)
テキストだけではなく、画像や音声などを組み合わせたマルチメディアを使用することで、学習効果が高まる。
2.空間近接原理(Spatial Contiguity Principle)
関連するテキストと画像は、物理的に近くに配置することで、学習効果が高まる。
3.時間接近原理(Temporal Contiguity Principle)
関連するテキストと画像は、時間的に同時に提示することで、学習効果が高まる。
4.首尾一貫原理(Coherence Principle)
余計な情報は排除することで、学習効果が高まる。
5.モダリティ原理(Modality Principle)
視覚情報に対しては音声を、音声情報に対しては視覚を用いることで、学習効果が高まる。
6.冗長性原理(Redundancy Principle)
画像と音声だけで情報を伝え、同じ内容のテキストを追加しない方が、学習効果が高まる。
7.個人差原理(Individual Differences Principle)
学習者の知識レベルや能力に応じて教材を設計することで、学習効果が高まる。
これらの原理を適切に組み合わせて使用することで、学習者は新しい情報をより深く理解し、長期記憶に保存し、新しい状況に適用することが可能となるという説ですね?
e-Learning が出始めた頃の理論ですから、こういった指針は必要だったのだと思いますし、事実何も考えずに e-Learning よりはマシだったのだとは思います。
しかし、この原理を使って実際に e-Learning を行っていくうちに様々な意見も出てきました。
・ユニバーサルな原則ではない
マルチメディア教材デザインの7原理は総じて有効だが、全ての学習者や全ての学習環境に適用できるわけではない。学習者の個々の差や学習の文脈を考慮する必要がある。
これらの原則はテクノロジーを前提としているが、全ての学習者や教育機関が必要なテクノロジーを持っているわけではない。テクノロジーを適切に使用するスキルも必要。
・過剰なシンプル化
コヒーレンス原則や冗長性原則のように、情報をシンプルにする原則は、複雑な概念や問題を適切に表現するのを難しくする可能性がある。
・学習者の能動性の欠如
これらの原則は教材の設計者が中心となっているため、学習者が能動的に学習することを妨げる可能性がある。
みたいな感じです。
まぁ、テクノロジーと少しの心理学と、ほんの少しの教育・学習関連の内容です。
私的には、「学習効果が高まる」がテーマの「マルチメディア教材デザインの7原理」ですが、
・視覚情報に対しては音声を、音声情報に対しては視覚を用いる
・画像と音声だけで情報を伝え
は、逆に「学習効果が下がる」ような気がします。
人間の認知機能はパラレルで、足し算にはなりませんし、受動的な「ご講演座学」と同じだと感じるからです。
「マルチメディア教材デザインの7原理」を商売に使った e-Learning業者によって、「e-Learning ありきの教育・学習」が蔓延する結果となってしまいましたね?
確かに、e-Learning が有効なツールとなることはあります。
しかし、99%の学校、塾、企業における e-Learning の採用は、「経費削減」だけが根本にあります。
そこに”愛”は、、ではなく、”教育”も”学習”もありません。
e-Learning が効果的な学習につながるかどうかは、二の次になっている現状で、いくら「マルチメディア教材デザインの7原理」を使ってLMSやコンテンツを作ったところで、意味はないと思うのです。
鈴木先生がよく言われることですが、
・まず、e-Learning(LMS) でやる必要があるのか?
を考えることが完全に抜けていますね、、、(と言いながら、鈴木先生も著書の中で「マルチメディア教材デザインの7原理」を紹介しているのですが、、、)。