企業においては、
・SME(Subject Matter Expert:内容領域専門家)
・インストラクター
学校では、
・教師
に、
「インストラクショナルデザイン」を学ばせない方がいい!
という考察です。
極論といえば、そうなのですが、これまで多くのSMEやインストラクターに散々「インストラクショナルデザイン」の必要性を説いてきて、実際にデザインも多くしてきましたが、これはもしかしたら”逆”じゃなかったのだろうか?、、、と、このところ考えているのです。
「インストラクショナルデザイン」を日本で普及させようと頑張ってこられた何人かの大学の先生や研究者の方たち(鈴木先生や向後先生など)は、
「SME、インストラクター、教師といった「”直接”教える側の人たち」が「インストラクショナルデザイン」を学べば、学習の「効果・効率・魅力」をアップさせることができ、「成果」が出る」
という考えであったと思います。
そこで、SME、インストラクター、教師が「インストラクショナルデザイン」を学ぶことのメリットを強調してきたわけです。
一見、普及の方法論としては正しいように思われますし、もし私が先生たちの立場であったとしたら、同じようにメリットについて言及するでしょう。
(メリット)
・教育の目的や目標、学習者のニーズや特徴、教育の内容や方法、教育の評価や改善など、様々な要素を分析・設計・開発・実施・評価するプロセスを認識することができる。
・専門分野に関する教育を体系的に行うことができるようになる。
・教育の効果や効率、魅力を高めるための手法やモデル、理論やツールなど、多岐にわたる知識や技能を習得することができる。
・学習者の習熟度や行動変容、モチベーションなどを測定・評価する方法や、学習者の興味や関心を引く方法などを学に事ができる。
・教育の品質や効果を保証することができるようになる。
・自分のやり方や考え方を見直せる。
・学習者の自主性や創造性を尊重できるようになる。
これは、「正論」であり、全く間違っていません。
しかし、
ここ20年近く(?)、多くのSME、インストラクター、教師が「インストラクショナルデザイン」を学んできましたが、企業の教育、学校教育は、少しでも良くなったでしょうか?
ずっと同じ単純なループを繰り返しています。
しかも、トータルとしては、「悪化の道を辿っている」と思います。
なぜでしょう?
理論的にも、戦略的にも「全く間違っていない」はずなのに、、、
これは、何度も記しましたが「理論(研究)」と「実践(現場)」が融合していないからです。
「実践(現場)」での具体的なデメリットの内容としては、
・時間と労力
インストラクショナルデザインを学び、適用するには時間と労力が必要。多忙な教育者やSMEにとっては大きな負担となる。
インストラクショナルデザインのモデルやテクノロジーに依存し、形成的評価を間違える。
・効果と効率の比率
効果と効率の比率を客観的に判断できない。
といったことが常に存在します。
SME、インストラクター、教師が「インストラクショナルデザイン」を少し学んだことにより、
「教え方がわかった!」
と過信してしまうことも非常に多いのです。
何の世界でも同じですが、
「下手に少しだけかじった人」ほど逆効果を引き起こし、厄介の種になるということです。
そして、「”直接”教える側の人たち」のほとんどが”道”を間違えます。
フローの途中で自己判断(過去の経験や勘)に従ったり、また逆に効果的ではないが始めに作ったデザイン通りに無理やり進めたり、肝心なポイントを軽視したり、、、、、
ということで、教育はとん挫、失敗し、成果を出せず、
「インストラクショナルデザイン」はダメ! ということになっています。
しかし、自分の専門があり、それを学習させることにより生計を立てている彼らのメインは「インストラクショナルデザイン」ではないわけです(本来はそうであるべきですが、少なくとも現状の社会では、、、)。
例えば、アカデミアの先生やコンサルなんかは、プロジェクトとして参加することはあっても、終了(一度はそれなりに成果がでる)すれば、その現場から離れます。
すると「教え方がわかった!」SME、インストラクター、教師たちは、独走していくわけです。
ほんの小さな「成功体験」だけを胸に、、、、たった一人で、、、
本来の「インストラクショナルデザイン」は、
・インストラクショナルデザイナー
学習者のニーズを理解し、学習目標を設定し、教材を設計し、評価方法を開発する主要な役割。
・SME (Subject Matter Expert)
専門的な知識を提供し、教材の内容が正確であることを確認する。
・プロジェクトマネージャー
プロジェクトのスケジュールを管理し、リソースを配分し、全体の進行を監督する。
・コンテンツライター/エディター
教材の文書化、編集、校正を行う。
・グラフィックデザイナー/マルチメディアデザイナー
イラスト、ビデオ、インタラクティブな要素などの視覚的なコンテンツを作成する。
オンライン学習環境や学習管理システム(LMS)の設定、カスタマイズ、トラブルシューティングを担当。
・評価者/テスター
教材の効果性を評価し、問題点を特定し、改善策を提案。
といった「チーム」で機能します(すべてが必要なわけでないです)。
また、そういったことを統括するCLO(Chief Learning Officer)も必要です。
企業内や学校には、インストラクショナルデザインを専門で行うインストラクショナルデザイナーさえほとんどいません。
「インストラクショナルデザイン」を少しだけかじった「SME、インストラクター、教師」たちが、そのすべての役を一人でこなさなければならないということです。
それでは、どんなに優秀な人だったとしても(オードリー・タンさんくらいなら大丈夫かも?)、、、、上手くいくはずがないですよね?
だから結論として、まずは、
「CLOやインストラクショナルデザイナーを企業、学校に置く必要性から始めるべき」
で、
SME、インストラクター、教師に「インストラクショナルデザイン」を学ばせるのはその後でないとダメなんじゃないか?
と、思うに至ったわけです。
これも「正論」ではありますが、実現することはないでしょう、、、、
ではどうする?
まずは、
企業や学校にたった一人でいいので「インストラクショナルデザイナー」を専門でやれる人を設置する
ということを拡散してほしいのです。