louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「シミュレーションへの過大評価」について

今回は、「シミュレーションへの過大評価」について、少し考えてみます。


最も適用されている分野としては「医療」分野ですね?


全世界的に、医師や看護師といった ”命を左右する” 職業の教育では、”シミュレーション”を含んだ教育が提供されます。


また、一般企業においてもロープレプレゼンの練習など ”シミュレーション” が用いられます。


インストラクショナルデザインの考えの中でも、”シミュレーション” は重要なファクターとされていますし、「SAMモデル」などは ”シミュレーション” がその中心的な役割を果たしますね。


私的にも、


・医療現場で適用されているのだから、間違いなく効果がある

・実際の現場に出る前の準備として必要(練習)

・”シミュレーション”を行うことにより新たな視点が養える


みたいに漠然と考えていて、これまでのデザインの中でも ”シミュレーション” を盛り込んでいたりしました。


しかし、今更ですが、

 

”シミュレーション”  を教育に盛り込むことは、どれほど有効なんでしょうか?

 

という疑問がふと浮かんできました。

シミュレーション

ということで、

「シミュレーション教育」とその「弊害」について少し調べてみました。


(シミュレーション教育)


”シミュレーション” を基盤にした教育は、実世界の状況や環境を模倣し、学習者が特定のスキルや知識を獲得、理解、応用するための教育手法。特定の状況やタスクの再現に使用され、教育者が学習者のパフォーマンスを観察し、フィードバックを提供できる環境を提供する。

医学、航空、軍事、教育など、さまざまな分野で採用されている。医学学生は、患者との対話、診断の立案、治療法の実施など、実際の医療環境を模擬した”シミュレーション”を通じて学習する。


メリットデメリットについては、


(メリット)


・実践的な経験を提供

教室の中で学んだ理論を実際のシナリオで適用する機会を提供する。学生は新しい概念を理解し、それを実際の状況にどのように適用するかを学ぶ。


・安全な環境での学習

実際のリスクなしに危険な状況を体験できる安全な学習環境を提供する。これは、医療、航空、軍事などの分野で特に有用。


・フィードバックと評価

学生のパフォーマンスをリアルタイムで評価し、直接フィードバックを提供する能力を持っている。学生は自分の理解度を確認し、必要な改善を行うことができる。


・自己学習と再学習

学生は自分自身のペースで学習し、必要に応じてコンテンツを再学習することができる。


・問題解決と意思決定のスキル強化

学生が問題解決と意思決定のスキルを強化するのを助ける。実世界の状況に対応する能力を向上させる。


(デメリット)


・高コスト

”シミュレーション技術”は、設備投資、ソフトウェアライセンス、維持費など、高い初期コストや維持コストを伴う場合がある。


・技術的な問題

技術的な問題に遭遇する可能性がある。ソフトウェアのバグやハードウェアの故障などが含まれる。


・制限された現実感

現実を模倣するが、全ての要素を正確に再現することはできない。特定の状況や環境を完全に理解するのを困難にする可能性がある。


・学習曲線

”シミュレーションソフトウェア”を理解し利用するためには時間と訓練が必要。技術に不慣れな学生にとっては難しい。


・依存

”シミュレーション”が教育の主な方法となると、学生がリアルな状況や人間との対話に対応する能力を欠く可能性がある。対人スキルや現実世界の経験が重要な職業にとっては特に問題となる。

 

上記の内容を冷静に考えてみても、確かに「メリット」はかなりあると思います。

特に医療分野では無くてはならないモノでしょうね?


ただ、場合によっては「デメリット」が勝ってしまうことも多いのではないかということが、想定できます。


恐らく、最も注意しないといけない点は、


・シミュレーションを信用しすぎない

ということと、

・シミュレーションと「実際の経験」とは別モノ


という意識の必要性ではないでしょうか?


教育や研修で ”シミュレーション” を行うと実際の場面でも ”シミュレーション” で行ったことやそのままの言動知識・スキルを適用する人がほとんどのように感じます。


そうやって学び、練習してきたのですから、当たり前のことですね?


それで上手くいく場合が多いとは思いますが、逆に大変なことになる場合もあるのではないか、、、、? と思ったりします。


”シミュレーション” を無くせばいい、少なくする、、ということが言いたいのではなく、


”シミュレーション” はあくまで ”シミュレーション”


なので、現状のように ”シミュレーション教育” を受けたから大丈夫、”ロープレ練習” を徹底的にやったから即戦力、、、のような風潮は少し違うのではないか、、、と感じるのです。


まだまだ理解している人が少ないので何度も記しますが、


カークパトリックの教育評価で、

 

”シミュレーション” による練習やロープレの成果を

ー Level 3(行動変容)ー

と捉える人が多いですが、

現場で実際に行えてはじめて Level 3(行動変容)ですから、、、


”シミュレーション” ”ロープレ” の評価は、

あくまで、 Level 2(学習)ー です。

 

とにかく、前提である「知識・スキル」を徹底的に習得し、その上で、”現場とは違う” という認識を持って ”シミュレーション” を行うことが重要ではないか、、と思うのです。