louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「過剰学習」と「エビングハウス」 ~ Over or Forgetting ~

「過剰学習」(Overlearning)は、必要なのか? という論点で記します。

 

(過剰学習)とは、簡単に言うと、

学習者が必要な知識やスキルを身につけた後も、同じ内容を続けて学習すること。


です。


機械学習統計学の、「過学習」「オーバーフィッティング」とは違いますので、間違えないように、、、)


で、これは、人により、状況により、「必要な場合」も、「不必要な場合」もあるでしょう?


普通に考えて、そりゃそうですよね(すみません)?


そんなことを、真面目に考えてみます、、、、。


「過剰」という言葉は”ネガティブ”な感覚がありますが、「過剰学習」はそういうことではないということを、最初にことわっておきます。


まず、「過剰学習」のメリットとデメリットには、


(メリット)


・定着効果

過剰学習は、学習内容を深く理解し、長期記憶に定着させることを助ける。反復することで、知識やスキルがより強く記憶に残る。


・習熟度の向上

特定のスキルについては、過剰学習によって高い習熟度を達成することが可能。特に、楽器の演奏やスポーツなどの技術習得に有効。


・自信の向上

十分に理解し、習得した知識やスキルは、自信をもって使用することができる。学習のモチベーションを高める要素となる。


・テストへの対策

特に試験などで必要とされる情報を確実に記憶するための有効な手段となる。


・忘却の防止

時間が経過しても情報を覚えていることを可能にする。特に長期間にわたる学習や、定期的な復習が難しい場合に有効。

 


(デメリット)


・効率の低下

新たな学習内容に移行する時間を奪う。全体としての学習効率が低下する可能性がある。


・モチベーションの低下

同じ内容を何度も反復することは、学習の新鮮さや興奮を失わせ、モチベーションを低下させる可能性がある。


・無駄な時間の消費

必要以上の反復は、時間を無駄に消費する可能性がある。学習時間が限られている場合、効率的な学習は重要。


心理的ストレス

過剰に学習することで、学習者に心理的ストレスを与える可能性がある。

 

・創造性の阻害

同じ内容を反復的に学習することは、新しい視点や創造的な考え方を阻害する可能性がある。新たな知識やスキルの獲得には、多様な学習経験が重要。


というようなことです。

 

学習には、「適切な反復」「適切な間隔」が重要とされていますね?


そこで連想されるのは「復習」ですね?


「復習」と「過剰学習」は、若干意味合いが違います(同じといえば同じですが)。


「過剰学習」が「学習した内容を過度に学ぶ(卓越?専門?)」ことに重点を置いているのに対し、復習は「忘れないように定期的に学習内容を見直す」
ということです。


・適切な反復

同じ内容を何度も繰り返し学習することで知識やスキルの定着を促すことができる。「反復学習」、「スペーシング効果」、「復習」と呼ばれる。


・適切な間隔

学習の間隔を適切に設定することで、長期記憶への定着が促進される。「間隔効果」と呼ばれ、学習した内容をすぐに忘れることなく、一定期間を空けてから復習することで記憶が強化される。


「学習」においてこの2つは大変重要なことですが、とりあえず今日は「過剰学習」について考えます。


まず、ここでいつも推奨している「TOTEモデル」ではどうでしょう?


「TOTEモデル」の中では、「過剰学習」は行いません。


「事前テスト」もしくは「事後テスト」に合格すればExitなのですからね?

 

ここで「過剰学習」を適用するということは、ExitせずにずっとTOTEのループを繰り返すということになります。

 

これは、効果・効率を考えると、意味のないことのように思われます。

一般的なインストラクションでは、こういうことは避けるべきだと思います。

 

しかし、その後の2項目(反復・間隔)は、大事です!


なぜ?


人は忘れるからです、、、、


そうです、人間の脳には短期記憶、ワーキングメモリ(?)、長期記憶があり、覚えた内容を符号化して長期記憶に入れないと、ほとんどのことは忘れてしまうからです。

エビングハウス忘却曲線

ここで、有名なエビングハウス忘却曲線が出てきます、、、


忘却曲線については、多くの人が知っているでしょう?


まぁ、忘却曲線」は大昔の研究ですし、実験内容についても非意味的な音節を用いて行われるなど、全て信頼がおけるということは無いのですが、「忘れる」ということにおいては勿論間違っていませんね、、、?


でも、忘却曲線」が、「忘れる割合」を示したのではなくて、「節約率」を表しているということを知っている人はあまり多くないのではないでしょうか?


「節約率」は一度記憶した内容を、再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合です。

 

つまり、「再学習と間隔の効果」です。


ということで、本当に重要な事柄については、間隔をあけて、同じ内容を何度も反復するというのが正解(?)でしょうね、、、、?


ただ、「過剰学習」が学習者のモチベーションを低下させることもあるので、特に企業内教育においては、教授デザインに注意が必要ですが、、、。