louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「デザイン思考」は世界を変えたか?

今ではあまり頻繁に語られませんが、数年前まで「デザイン思考」がありとあらゆる分野で取り上げられていました。


「教育・学習」の分野でも、学会や論文で多く扱われていました。


確かに、「教育・学習」に役立つことや、共通の内容も多いですね?


そこで、今回は ”「デザイン思考」は世界を変えたか?” について考えてみます。


「デザイン思考」といえば、IDEOのティム・ブラウンが書いた「デザイン思考が世界を変える」からですね、、、


この本を読んだのは、もうかなり昔なので結構忘れていますが、要点(?)を記したノートを見ながら記してみます。

デザイン思考

<デザイン思考(Design Thinking)>


・デザイン(設計)を創作する際のプロセスを、さまざまな問題・課題解決に使える思考法に転用し、課題・問題に対する解決策を見つける手法。


・デザイナーがデザインする過程で用いている思考プロセスをビジネスに活用した考え方のことを言う。このデザインとは、衣類やインテリア、建築物などを装飾したり、実際に作ったりすることではなく、設計することを指している。


(デザイン思考を実践するための5段階プロセス)

1.共感(Empathize) 
2.問題定義(Define)
3.創造・着想(Ideate)
4.試作(Prototype)
5.テスト(Test)

 

1・共感(Empathize)

問題を解決するためには、まず問題に対する深い理解を得ることが重要。ユーザーや顧客の視点から問題を理解するために、観察やインタビューなどの共感の手法を使う。


2.問題定義(Define)

共感のステージで得た情報を分析し、問題を明確に定義する。ユーザーのニーズ、挙動、経験を理解し、明確で実行可能な問題のステートメントを作るプロセス。


3.創造・着想(Ideate)

定義した問題に対して、可能な限り多くの解決策を思いつくフェーズ。ブレインストーミングマインドマップなどの手法。


4.試作(Prototype)

イデア出しのフェーズで得たアイデアを具体的な解決策に変えるステージ。実際の製品やサービスの低コストなモデルを作り、アイデアをテストするためのもの。


5・テスト(Test)

プロトタイプをユーザーに試してもらい、フィードバックを得るフェーズ。このフェーズで得た情報を元に、プロトタイプを改善し、問題解決策を最適化する。

 

(デザイン思考家のタスク)


・「洞察」

他者の生活から学び取る


・「観察」

人々のしないことに目を向け、言わないことに耳を傾ける


・「共感」

他人の身になる(他人の担架に横たわる)

 

(デザイン思考のメリット)


・ユーザー中心

デザイン思考はユーザーのニーズと経験を中心に置くため、最終的な解決策はユーザーにとって価値あるものになりやすい。


・創造的な解決策

デザイン思考は多数のアイデアを生み出し、それらをプロトタイプ化してテストすることで、新規性や創造性が高い解決策を生み出すことができる。


・問題の深層理解

共感と定義のステージでは、問題を深く理解するためにユーザーの視点を取り入れる。表面的な問題だけでなく根本的な問題を解決することができる。


・リスクの軽減

プロトタイプとテストのステージでは、解決策を市場に投入する前に試すことができる。リスクを軽減。


(デザイン思考のデメリット)


・時間とコスト

デザイン思考のプロセスは時間をかけて行うものであり、リソースも必要。特に、プロトタイプの作成やテストは時間とコストがかかる。


・不確実性

デザイン思考はイテラティブなプロセスであり、最終的な解決策が最初から明確でないことが多い。


・結果の測定

デザイン思考の結果は、従来のビジネスメトリクスで測定するのが難しいことがある。デザイン思考の価値を理解し評価するのに困難を伴う場合がある。


・ユーザー参加の困難さ

ユーザーの参加を必要とするが、ユーザーが十分に参加できない、またはそのフィードバックが偏っている場合、有用なインサイトを得るのが難しい場合がある。


プロトタイプを使用することや、SPARC(See-Plan-Act-Refine-Communicate)「知識と行動のギャップ」「何を? ではなく、なぜ?」「考えるな、見ろ!」「やめどきを見極める」、、、、


など、多くの分野に対応できる考えで、、、「教育・学習」においても、とても大事な考え方がわかりやすく説明されていますね?

 

まぁ、プロトタイプメインの教育モデルというと ”SAMモデル” ですが、それよりは「デザイン思考」の方がいいようにも思います、、、


流石にアップルが手を組むはずです、、、(ほんとか?)


「教育・学習」のデザインを考える際、最も参考になるのは、分析における「洞察」「観察」ですね?


特に「学習者分析」等をする際には、あらゆる可能性を考えて行う必要があります。


つまり、これは「型に嵌めたり」「方略やモデルを共通化したり」「毎回同じインストラクションを行う」といったことを否定することで、

 

「同じインストラクションは1つもない」

 

というインストラクショナルデザインの考えにぴったりです。

 

ただ、世間様(?)が「イノヴェーションを起こせる」みたいに「デザイン思考」を捉えてしまったためにいつの間にか消えてしまいました。


そうではなくて、「よく見て」「よく考えて」「試行して」ということが重要です。


「デザイン思考が世界を変える(How Design Thinking transforms organizations and inspires innovation 」は、刺激的でキャッチーなタイトルで、そのこともあってベストセラーになりましたが、「イノヴェーションを起こせなかった」ために、短命であったようにも思います。