louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「STAR遺産モデル:Software Technology for Action and Reflection」

今回は、インストラクショナルデザインの1つのモデルである「STAR遺産モデル:Software Technology for Action and Reflection」について考えてみます。


(STAR遺産モデル:Software Technology for Action and Reflection)


「教材のすべてを設計・開発者が決めて提供して教師や学習者に何の選択の余地も残さないアプローチ」と、「何も設計・開発者が決めないですべて教師や学習者に任せて助言も提供しないアプローチ」の”中間的な位置づけ”をねらったIDモデル。

利用者が次の利用者のために遺産(Legacy)を残せるしくみ

1990年代のマルチメディア教材「ジャスパーシリーズ」の開発で、小学校の教師が開発者の意図に沿わない利用方法を採用して授業をした経験から、任せるだけではなく何らかの利用ガイドの必要性を感じたことから発想したモデル。

(ジャスパー教材)

(1)ビデオ提示(Video-based format)
(2)物語形式(Narrative with realistic problems)
(3)生成的学習(Generative format)
(4)情報埋め込み設計(Embedded data design)
(5)複雑な問題(Problem complexity)
(6)類似冒険のペア化(Pairs of related adventures)
(7)教科間の連結(Links across the curriculum)

>7つの教材設計原則に基づいて設計され、グループ学習用の教材として、子どもの探索的・問題発見的な協同学習を目指したもの。

>教師が採用する教授モデル次第で、異なる様相の授業が展開される。教材だけでなく、教師をサポートする仕組みがなければ、教材作成者の意図は実現されない。

     ↓

「STAR遺産モデル」が提案された。

STAR遺産モデル

ICTの活用で、利用者が次の利用者のために遺産(Legacy)を残せるしくみを9つのステップで提供。


(STAR遺産モデルの9ステップ)

 >2~7を3回行う

1.先を見る・あとで振り返る「双眼鏡」

課題を理解させ、今すぐにチャレンジする機会を与え(事前テスト)、振り返り自己評価するためのベースラインを提供。動機づけのための画像、解説、質問。


2.最初のチャレンジ(サイクルの始まり)Challenge

学習することが何かをイメージさせる(メンタルモデルを持たせる)[3つのチャレンジが用意されている。チャレンジは誰かが困った状況を示して、学習者に解決してくれるように頼むビデオなどが使われる]


3.アイディアを練る(問題と解決策)Generate Ideas

アイディアを電子ノートに書き出し、クラスで共有する。考えを外化、アイディアを交換、教師にも知らせる。初期段階を記録してあとで成長を実感できるベースラインにする。


4.多視点から眺める(モデルの提示)Multiple Perspectives

専門家の視点と術語に触れ、自分たちのアイディアと比較させる。何が不足しているかを確認し、現実的なゴールを設定する。様々な考え方があることを知らせる。


5.研究と修正(学習者が挑戦する)Research & Revise

情報収集、協同作業、「ジャスト・イン・タイム」講義、スキル向上レッスン、他の生徒の残した作品(遺産[Legacy])鑑賞、シミュレーションや擬似体験活動など。


6.度胸試し(形成的なテスト)Test your mettle

準備ができたと感じたときに挑戦させる。多肢選択テスト、小論文、作品作りなど様々な形のテスト。チェックリストなどで何を参考にすれば合格基準に達するかをフィードバック。


7.公開(サイクルのおわり)Go Public

最良の解決策を提示させ、電子的に公開。自己評価・相互評価の方法を会得。達成基準を明確にし学びあうことやより高い基準を目指すように仕向ける。公開の意義を理解させる。


8.徐々に深める

テーマを相互に関連させて、徐々に大きな問題に高い理解に導く。問題解決型で選択させるチャレンジから、プロジェクト型のデザインさせるチャレンジに進む。


9.振り返りと決断

3サイクル終了時に、「双眼鏡」に戻る。困難でいらいらした体験のあとで忍耐強さがもたらす良い結果を示す。


(STAR遺産モデルの特徴)


・3回繰り返すことにより徐々に応用力を養成することができる。

・協同学習を通してコミュニケーションのスキルを向上させることができる。

・遺産(Legacy)が残ることで、徐々に教材が成長していく。


ということです。


「STAR遺産モデル」について今ではあまり語られることはありませんね?

 

まずは「STAR”遺産”モデル」って名前がだめですよね、、、?

 

”遺産” っていうのと、”Legacy” では、日本人の捉え方は全く違います。

 

これが「STARレガシーモデル」という名称にしておけば、、、とも考えましたが、大した違いはないですかね、、、?


まぁ、そんなことはどうでもいいのですが、「STAR遺産モデル」教材作り教える側学習者の3者にとって、とてもいい考えだとは思います。

とはいえ、


「あまりにも時間がかかる」


という弱点はどうしようもないですね、、、、。


・ICTが出だした頃の発想ゆえ、コンピュータを使えば効率化できると考えたのか? 

・二兎、三兎追った為に、一兎も得ることができなかったのか?


わかりませんが、、、、、

それと、遺産(Legacy)が教材を進化させる、、、というのは何となく合っているような合っていないような気がします。

よくある「好事例」のように遺産(Legacy)を残した人だけが満足するようなモノになることもあるのではないでしょうか?


「STAR遺産モデル」を今時やろうという人はいないかもしれませんが、サイクルの一部を削ったり、AIを適用できるところは任せたり、、、、すれば今の時代にあった「STARレガシーモデル」ができるようにも思います。