louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「教室オーケストレーション(classroom orchestration)」が奏でる「幻想曲」

今回は、”「教室オーケストレーション(classroom orchestration)」が奏でる「幻想曲」” について少し考えてみます。


CSCL(Computer-Supported Collaborative Learnin)提唱と ” 協調学習(Collaborative Learning)” の文脈において、「教室オーケストレーション(classroom orchestration)」というコトバが生まれてきました。

教室オーケストレーション

(教室オーケストレーション(classroom orchestration))


・複数の社会的レベルにおいて生起する複数の学習活動に対して支援的な介入を調整するプロセス。

・様々な制約がある中で、複数レベルの活動をリアルタイムに教師が管理すること。

・テクノロジーを効果的に使用し、教室の学習活動を効果的に管理、調整するための教育技術の一つ。


(教室オーケストレーションの5原則)


・学習が複数の活動水準(個人、グループ、クラス、コミュニティ)、および、複数の道具(デジタル機器とそれ以外)を結びつけた「統合シナリオ(integrated scenarios)」に基づく。


・統合シナリオの実行は、教師に高い付加をかけるため、「教師をエンパワーする(empowering teachers)学習環境を構築する。


・教師がデザインを即興的に変更できるよう「柔軟性(flexibility)」のある学習環境をデザインする。


・時間管理、学習規律といった実践的な問題に対処するため、「実践性(practicalities)を重視する。


・教室の物理的側面の「制約(constraints)に注意を払う。


教室オーケストレーションメリットデメリット


(メリット)


・個々の学習者のニーズに対応

教師がテクノロジーを使い、学習者一人ひとりの理解度や学習進度に応じて指導を行うため、個々の学習者のニーズに対応した学習が可能となる。


・効率的な学習進行

デジタルテクノロジーを活用することで、教師はリアルタイムで学習者の進捗を把握し、効率的な学習進行を実現できる。


・学習者同士の協力・協調学習

教師が学習活動を統括することで、学習者同士の協力・協調学習を促進できる。


(デメリット)


・教師の負担増

教室オーケストレーションは、教師が学習者全体を監視し、個々の学習者に対して指導を行うため、教師の負担が増える可能性がある。


・デジタルテクノロジーへの依存

デジタルテクノロジーを利用することで教室オーケストレーションは効果を発揮するが、その反面、テクノロジーへの依存度が高まり、故障やシステムの問題が発生した際には大きな影響を受ける可能性がある。


・教師のスキル、シナリオの精度

教師のスキルや経験、シナリオの精度が求められる。教師がこれらの技術を使いこなすためには、十分なトレーニングが必要となり、シナリオの精度が低いと教育効果が得られない。


というようなことです。

ようは、レベル分け等を行い、各レベルに合った最適の学習をさせるのではなく、殆どの学校が行っている前提もレベルも確認しない一斉授業で、ICTを使ってどうにか全員が学習できるようにしよう、ついでに協調すれば、何かいい結果が生まれるかもしれない、、という発想ですね?

 

日本のGIGAスクール構想は、ICTの発展に沿ったCSCL(Computer-Supported Collaborative Learnin)だと言えますが、具体的なシナリオも、教師への教育も、何も無い方策なので、「教室オーケストレーション(classroom orchestration)」というコトバはあまり使われませんね?


このコトバがあまり普及していないのには、いくつかの矛盾と弱点があるからだと思います。


まず、

オーケストラとは、

 

” 指揮者を中心 ” に、各楽器演奏者(ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス、フルート,オーボエクラリネットファゴット,ホルン,トランペット,トロンボーン,チューバ,ティンパニ等)が各パートの譜面に沿って演奏することで、トータルな音楽を作ることが目的です。

通常、オーケストラで最も注目されるのは「指揮者(教師)」です。このことは、「学習者主体(演奏者)」という流れとは真逆の考えです。

 

そして、評価されるのは「指揮者(教師)」が作り演奏(実施)されたシナリオ(編曲)ですね、、、、(カラヤンの、クライバーの、トスカニーニの、、とか)。


さらに、通常、演奏者(学習者)には必然的にヒエラルキーが作られます。第一バイオリン、第二バイオリン、、、、曲によってはほとんど出番のない打楽器、、、という感じです。有名なソリスト(成績のいい学習者)を中心にアレンジされ、その人だけが目立つように、その他の演奏者はサポートという役割に徹します。


プロの演奏家が集まった有名オーケストラは、学校に例えるなら、超エリート校です。

 

そういった環境でなら、「教室オーケストレーションはもしかしたら少しは効果・効率があるのかもしれません(灘高の教育が絶賛されたり、歴代校長がヒーロー扱いされる馬鹿らしい風潮もありますし、元来、灘高の生徒に授業や教育など必要ではないのに、、、)。


確かに、現状の学校教育、授業を ” 小手先のやり方で変えようとする ” のであれば、GIGAスクール構想」「教室オーケストレーションも。そして「協調学習」「学びあい」もありでしょうね?


しかし、マチュア演奏家(一般学習者)楽団の場合は、それぞれレベルを測りレベル別の教育それぞれのシナリオが必要です。そして、すべての人のレベルが揃って初めて、合同での音合わせ、リハーサル(授業、インストラクション)が行われるべきだと思うのです。


「教室オーケストレーション(classroom orchestration)」が奏でるのは「幻想曲」しかないと思うのです。