今回は、”「事前テスト」と「事後テスト」は ” 同じ問題 ” でいいのか問題 ” について考えてみます。
TOTE-MODELは、これまで何度も記してきましたが、元々は心理学において考えられたフレームワークであり、それをインストラクショナルデザイン等の「教育領域」でモディファイされ、広く使われるようになりました。
「教育」でTOTE-MODELを使用する場合、
Test(事前テスト)→ Operate(インストラクション)→ Test(事後テスト)→ Exit
の前に、
「診断テスト」でレベルをはかったり、「前提テスト」でインストラクションを受ける資格(前提知識の無い人が受けても理解できない)を設けたりして、対象者を絞ります(ここが一番の効果ポイントなのですが、時間と手間がかかることから、ほとんど実施されていないという悲しい事実もあります)。
今では、企業の研修や教育でもTOTE-MODELを取り入れているところもそれなりにあるのではないでしょうか?
私自身も、これまで講演やレクチャーの中で、毎回のようにTOTE-MODELの実施を推奨してきました。
そんな中で、TOTE-MODELについての実施困難性や質問で多いのは、
1.「事後テスト」で合格できなかったとしても再度インストラクションするのは時間的に難しいため、 Exitさせてしまう。
2.「前提テスト」で ”足きり ” をするとクレームがある(平等性)。
3.「事前テスト」と「事後テスト」は ” 同じ問題 ” でいいのか?
といったことかもしれません?
そこで、3.の問題についてです。
「学習目標」を達成(既に理解しているか)できたかどうかを評価するテストですから、当然ながら問う内容は同じになります。
これが年に1回の研修等であれば、
「事前テスト」と「事後テスト」は ”同じ内容 ”を違う問い方で行う
というのが ”正論 ”です。
しかし、LMSなどで毎月いくつものコンテンツを作り、実施させないといけないような場合、” 同じ内容を、違った問い方 ” で問題作成するというのは、結構ストレスがかかるようです。
一般的な考えとして、「事前テスト」と「事後テスト」を ” 同じ問題 ” にするメリットとデメリットについては
(メリット)
・直接比較が可能
同じ問題を使用することで、学習や介入の前後でのスコアの変化を直接比較することができる。
・測定の一貫性
同じ問題を使用することで、測定の一貫性が保たれ、外的要因による影響を最小限に抑えることができる。
(デメリット)
・学習効果
被験者が事前テストで問題を覚えてしまい、事後テストでその記憶をもとに高いスコアを取る可能性があり、実際の学習や介入の効果を過大評価してしまう。
・動機付けの変化
同じ問題を繰り返し解くことで、被験者の動機付けや注意が変わる可能性がある。
というようなことが言われます。
設問の数が少ない場合は、テストの正解だけを覚えてしまって、学習していなくても「事後テスト」に合格するというのはLMSコンテンツでよくあることです。
実際に考えられるメリットとしては、「テスト効果」による学習、つまりテストの内容を再度読み考えることで学習ができるということくらいかな、と思います。
企業内教育に限定して、極論を言えば(本来は違う問い方をすべきですが、)、
・「言語情報(記憶)」を問うテストであるなら、
>「事前テスト」と「事後テスト」は ” 同じ問題 ” でもいい
と考えます。
勿論、「知的技能(応用)」を問うテストの場合は、必ず「事前テスト」と「事後テスト」は ”違う問題 ” にしないとダメです。応用する内容を記憶しても意味がありませんから、、、、
というようなことを普段から言っているのですが、なかなか理解してもらえる人が少なくて・・・