louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「現象ベース学習(Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)」という考え方

今回は、 ”「現象ベース学習(Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)」という考え方 ” というテーマで少し考えてみます。

現象ベース学習(Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)

以前、 ”「フィンランド教育」の幻想 ”  でも少し記しましたが、幸福度だとか、先進教育、、、などと一部で褒めたたえられるフィンランド が取り入れた「教育方略」です。


(現象ベース学習:Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)


教育の一手法であり、生徒が実際の現象や問題に基づいて学習を進めるアプローチ。

従来の教科や科目ごとの枠組みを超えて、より統合的かつ実践的な学びを促すことを目的としている。

7~16歳の義務教育の間は、年に一つ以の教科横断型の授業が義務化された。従来の教科学習がなくなる訳ではなく、異なる教科で学んだ内容を教科横断型の授業で融合させるという位置付け。

生徒は特定の現象やテーマに関して、複数の教科にまたがる知識やスキルを用いて探求し、解決策を見つけたり理解を深る。

 

(例)

気候変動というテーマを取り上げる場合、科学、地理、経済、政治など様々な視点から学び、総合的な理解を目指す。


(特徴)

全体性、真正性、文脈性、問題解決型探究、オープンエンド学習プロセス


・統合的学習

複数の教科を統合して学ぶことで、現実世界の複雑さを反映した学びを提供。


・問題解決能力の育成

実際の問題に対する解決策を考える過程を通じて、クリティカルシンキングや創造的思考力を養う。


・主体的学習

生徒が自ら学ぶ意欲を持ち、探求心を持って学習に取り組むことを促す。


・協働学習

グループワークやディスカッションを通じて、他者との協力やコミュニケーション能力を高める。


(メリット)


・統合的な理解の促進

現実世界の問題や現象に基づいて学ぶことで、生徒は複数の教科にまたがる統合的な理解を深めることができる。


・実践的なスキルの習得

問題解決能力、クリティカルシンキング、創造的思考力、リサーチスキルなど、実際の生活や仕事に役立つスキルを養う。


・学習意欲の向上

生徒が自分の興味や関心に基づいて学ぶことで、学習へのモチベーションが高まる。


・協働学習の促進

グループワークやディスカッションを通じて、コミュニケーション能力やチームワークのスキルが向上。


・柔軟な学びのスタイル

従来の教科ごとの枠組みに縛られないため、柔軟なカリキュラム設計が可能。


・現実的な問題解決

生徒が実際の社会問題や科学的現象に取り組むことで、学びが現実の生活と直結しやすくなる。


(デメリット)


・カリキュラム設計の難しさ

教師や教育者にとって、統合的なカリキュラムを設計することは複雑で時間がかかる場合がある。


・評価の難しさ

統合的な学びの評価は、従来のテストや試験では難しいことがあり、公平な評価方法を見つけることが課題。


・教師の準備とトレーニン

教師がPhBLを効果的に実施するためには、専門的なトレーニングやリソースが必要であり、すべての教師がこれに対応できるとは限らない。


・学習進度のばらつき

生徒一人ひとりの進度や理解度が異なるため、全員が同じペースで学ぶことが難しくなる可能性がある。


・リソースの必要性

現象ベース学習を効果的に行うためには、多くの教材やリソースが必要となり、学校や教育機関の予算や設備がそれに対応できない場合がある。


・標準化されたテストとのギャップ

現象ベース学習は標準化されたテストの内容と必ずしも一致しないため、テスト結果に基づく評価や進学に不利になる可能性がある。


ということです。


「現象ベース学習(Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)」を大まかに分類すれば、” デューイスクール ” 、 ” マーク・プレンスキーのスキル基盤型カリキュラム ” 、” インターリーブ学習 ” の範疇になります。


何をいまさら、、という気がしないでもありませんが、「教育の理想」を目指すことは重要なことですし、それを実現しようとすることは素晴らしいことです。

 

この点だけで言えば、確かに「現象ベース学習(Phenomenon-Based Learning、PhenoBL)」、 ” フィンランドの教育 ” は他の国の教育の遥か彼方を行っているのかもしれません。


しかし、こういった教育を取り入れられるような余裕のある国は、そう多くはない、というかほとんどないと思うのです。


社会の構造として、学歴優先、貧富の差、職業による偏見、、、などで成り立つこの国やアメリカ、ヨーロッパの多くの国においては実現不可能な教育です。


” デューイスクール ” のように、 ” 実験的 ” に行うのであれば、問題は少ないと思いますが、これを ” 国 ” として統一的にやることはムリです。


「探究学習」「発見学習」、その他の教育・学習のモデルと同じで、


” 教育・学習としてはある程度 ” 理想的 ” だけれど・・・・”


” やりたいことはわかるけど・・・・ ”


ということです。

 

また、フィンランドは多くの面で成功を収めている国ですが、「人口減少と高齢化」、「経済成長の鈍化」、「地域格差」、「移民問題」、「気候変動」など、さまざまな課題もあるようで、今後もこの教育が継承され進化していくのかどうかはわかりませんね、、、、