コロナをきっかけとして、企業においても「オンライン学習」の需要が再度高まり、そんな中で「リスキリング」というトレンドにも押されて、LXP(Learning Experience Platform)というシステム(?)が注目されたことがありました。
今回は、”LXP(Learning Experience Platform)が企業で役に立たないわけ”という観点で考えてみます。
「これからはLMS(Learning Management System)で管理するのではなく、
学習者中心の自己学習を促進するプラットフォームであるLXP(Learning Experience Platform)が重要だ!」
と、LMS業者が一斉に企業の教育担当や人事部にプロモーションをかけ、余裕のある多くの企業がLXPを導入しました。
(LMS) と(LXP)
LMS(Learning Management System)
LMSは主に教育機関や企業が学習コンテンツを管理、追跡、報告するために使用される。コース作成、学習者の進行状況の追跡、評価、フィードバックなどを一元的に管理することができる。基本的にはトップダウン型の学習モデルで、管理者が学習内容や進行をコントロールする。
LXP(Learning Experience Platform)
LXPはより個々の学習者に焦点を当てたプラットフォーム。LXPは学習経験をパーソナライズし、学習者が自分の学習経路を自由に選択できるようにすることを目指している。ユーザーは自分の興味やニーズに応じてコンテンツを選択でき、様々なソースからの学習資料へのアクセスが可能。また、ソーシャルラーニング(他のユーザーとの共有や協力)も重視される。
(LXP(Learning Experience Platform)導入のメリット)
・自己学習を促進
LXPは学習者中心のプラットフォームで、自己学習を促進します。学習者は自分自身のペースで学習することが可能で、自己成長や能力開発につながる。
・パーソナライズされた学習経験
LXPはAI等を活用して学習者の興味や学習履歴に基づくパーソナライズされたコンテンツを提供する。これにより学習者の関心やモチベーションを維持しやすい。
・社会的学習
LXPは学習者同士のコミュニケーションや共同作業を可能にするため、社会的な学習を促進する。チームワークやコラボレーションスキルも同時に向上する。
・アクセスしやすい
クラウドベースのLXPは、場所や時間を選ばずにアクセス可能。モバイルデバイスからでも学習することができ、リモートワークや在宅勤務でも学習を続けることが可能。
こういったメリットを聞かされると、
「LXPを導入してみようか!」
などとなるのも頷けます。
「学習者中心」
「自己学習」
「パーソナライズ」
「学習経験」
「教育・学習」においては、大変重要なワードばかりです!
しかし、
LMSと比べると、トータル費用で考えれば数倍かかる LXP を導入したことが原因で、「業績が上がった」、とか、「生産性がアップした」、などという事例を聞いたことがありません。
業者のHPに上がってる企業インタビューなどでは、
「自発的に学びたいと思えた」
「以前から学びたいと思っていた分野の知識が身についた」
「学習意欲に結びついた」
「研修に参加するには時間はないが、オンラインで空いた時間に勉強できるので良かった」
「学びが気軽にできた」
という「好意的な感想」だけです、、、、。
当然のことですが、営利企業は成果(業績に関与)を出さなければ、継続した投資はしません。
よって、必然的に「リスキリング」も「LXP」も姿を消そうとしています。
企業での「教育や学習」について真正に学んだ人が経営者の中に1人でもいたとしたら、間違ってもこういうモノ(ツール)に大事な会社のお金は出さないでしょう?
また、LXPが提供するコンテンツ内容についても、ほとんどが従来のLMSと同じで「ご講演座学」をただ映像として録画し、オンデマンドで再生するだけのものです。
どんなに興味がある分野でも、「ご講演」は「ご講演」でしかなく、「教育」とは呼べませんし、ほとんどの場合「学習」にもなりません。
LMSがよく言われる「垂れ流しの e-Learning 」にしかなりません。
そういうと、
「従業員のためを思って導入したんだ!」
「QOLを考えて・・・」
という人もいるでしょう。
確かに、少数の従業員のためにはなるかもしれません。
「英語力をあげたり」、「経営の知識をつけたり」、「マーケティングに精通し」て、” 転職する ” のには役立つかもしれないですね?
「学ぶ」ということは企業の教育担当や人事部の人が考えているほど容易なことではありません。
まして、企業で仕事の成果を上げないといけない人たちが、興味のあること、別分野のことを「学ぶ」ということは大変なことです。
経営者が、どうしても従業員に様々な知識やスキルを付けさせたいと考えるのであれば、最低限の「ベネフィット」が必要になります。
MOOCs 同様に、「ベネフィット」と「目的」がない個人の学びは間違いなく継続しません。
ハーバードや東大の教授の講義が受けられるといっても、そんなものはYouTubeを見ているのとかわりません。
単位がとれて卒業できるわけでなく、個人の「ベネフィット」にはならないので、MOOCs の修了率が数パーセントなのです。
LXPの指定した5つのコンテンツを受講してテストに満点合格すれば、「係長は課長に」、「課長は部長に」、「部長は役員に」します、とでもいうのなら多くの人が、どんなコンテンツであろうと真剣に「学ぶ」でしょう!
そうすれば、LXPは今後残っていくかもしれません、、、、
(というか、それではLMSと何もかわらないですが)
でも、そんなことをできる会社はないでしょうね?
LMSがほとんどの企業に導入され、利益が少なくなったLMS業者(「教育・学習」を学んでいないシステム屋さん)が考えたのが、LXP(Learning Experience Platform)ですから、消え去るのは仕方がないと思います。
そういうツールではなく、まずは「教育・学習」とはどういうことか? について学びましょうよ!