louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「学習の継続性評価」について ~ 日本の大学の成績証明書 ~

新入社員採用時学生時代の成績を評価する企業は非常に少ないのが現状です。

 

一応、「成績証明書」を出してもらうものの、ほとんど参考にされないのが実情のようです。


「成績証明書」の内容の信用性等については後で触れますが、”意味不明の入社試験””面接”で評価して合否を決めるより、少なくとも学生時代に学んでいたかどうかを確認する方が余程重要なことだと感じます。


転職の場合は、前の会社等での実績などで採用を決めるのに、新入社員採用の場合は、学校では学んでいなくても卒業できていればいい、、、というような考えは、あまりにも不合理です。


昔から、日本の大学「入りにくいが、卒業は簡単」などと言われてきましたが、こういうところにもその原因があるように思います。


それでいて、「即戦力」の新人が欲しいから、、、、という思考にはまったくついていけません。

 

「学習」を「継続」していない人が、「即戦力」になるのでしょうか?

 

同じ業種から転職した人ならそうでしょうが、新入社員に「即戦力」を求めること自体ナンセンスですね?


ということで、今回は「学習の継続性評価」について考えてみます。


こんな簡単なこと(簡単なことほど気づきにくいというのはよく言われることですが)がわかったのは、もう何年も前に東京国際フォーラム e-Learning の講演を行ったときのことです。


その当時は、「HRD(Human Resource Development)関連」「e-Learning 関連」の催しが会場を半分に切って一緒に行われていました(今は別々に行われています)。

 

それまで、あまりHRDについては調査していなかったのですが、当時の「HRD 関連」ソフトウェアの価格の高さに驚きました。


ほとんどが、「e-Learning 関連」ソフトウェアの数倍はしていましたね?
(その後は、かなりHRD 業界も落ち込んで、かなり安くなったようですが)


講演をどうにか終え、会場で各会社のソフトウェアの説明を聞いてまわっていた時に、「HRD 関連」学生スタートアップの人に呼び止められ内容を聞きました。

 

その会社のシステム(?)は、新入社員採用時に、”学生時代の成績”をパラメタとして入力し、その人が会社に入ってからも「継続的な学び」を行えるのかどうか、「成果」を上げられるかどうかの判定を行うというモノでした。


学生時代はバンドばかりやっていて、ギリギリの単位で卒業し会社員になった身としては、かなりの衝撃がありました。


今になって考えることですが、大学に入るまでは「学習」を継続してきたとしても、大学に入った途端「学習」をほとんどやめてしまうという日本の構造は、非常にまずいですね?後悔などほとんどしない私ですが、大学で真剣に勉強していたら違った人生になっただろうな、、、とはよく思います


「学習」は「継続」してこそ成り立ちます。

「継続」しなければ、人は「忘れ」、日常に流され次第に「学習」することがなくなります。

学習の継続性評価

「学習を継続してきた人」と、「学習の継続を中断した人」、勿論、それを判断することは難しいことです。


現在の「成績証明書」データだけで判断できないというのは、その通りですし、大学での評価も、「秀、優、良、可、不可」とか、GPA(Grade Point Average)の数値といった相対評価がほとんどです。


インストラクショナルデザインの考えでは、相対評価はあまり意味がないですね? 


では、どうすればいいか?

 

大学の成績の評価基準に、「学習の継続性」を加えればいいのです。


本来、大学は「専門分野を学びたくて」行くところなのですから、「教える側」が少しだけ手間と時間をかければできないことはないと思いますし、「学ばない学生」には単位をあげなければいいのです。


方法としては、定期テスト」だけでなく、各講義において「事前テスト」「事後テスト」をすればいいだけのこと です(勿論、学習目標に合ったテストを作成するというのが大前提です)。

ごく普通のインストラクションを行えばいいのです、、、、


以前に学んだ知識やその応用で、各講義のテストをクリアすることができる場合もありますが、「テストを受ける」という行為自体を「学習」としてとらえれば、それはそれでいいのではないでしょうか?


そうすれば、「学習の継続性」が測れます。

つまり、データが取れます。


・「15回の各講義のテスト」で合格した人が「定期テスト」で不合格になる場合もあるかもしれません。


・「15回の各講義のテスト」で不合格の人が「定期テスト」で合格になる場合もあるでしょう。


定期テストの合否」での評価と、「15回の各講義のテストの合否」を別と考えて評価します。

 

単位をとれなかった(定期テストで不合格)教科についても、毎回の講義のテスト成績を評価します。


この2つの評価を「成績証明書」として作成すればいいと思うのです。


さらに考えると、こういった分野では”AI”というか”ICT”を積極的に導入することができます。

 

各テスト問題の分析です。

その問題が、「学習」を「継続」して解ける問題なのか、その講義だけ受ければ解ける問題なのかを重みづけします(「前提テスト」の代わりになります)。

そうすれば、更に「学習の継続性」を細かく評価することが可能となるように思います。

 

企業においても、

「大学のレベル」と「入社試験」、「面接」で選考するのと、

大学のレベルなど関係なく、「学習を継続」してきた基準で選考するのと、


一長一短があることは確かですが、余程専門的な仕事以外は、「学習」を「継続」してきた人の方が会社に貢献できるように思えるのです。


そんなことを言うと、

「イノヴェーションを起こせるのか?」

「創造性はあるのか?」

なんていう人が必ず出てきますが、

いや、

「世の中の99%の人は、イノヴェーションなど起こせません」

「エリート大学で「学習」しなかった人に創造性があるかどうか、どうしてわかるんでしょう?」


「学習」は「継続」することに意味があります!

それだけです。


また、前述の学生スタートアップの会社がその後どうなったのかはわかりませんが、最近の「HRD 関連」はどうも違った方向に行ってしまったように感じます。

”GAFAM等の入社試験”をマネてみたり”面接時のビデオ”を、顔の表情、仕草、回答を”AI”で評価するみたいな錬金術まがいのソフトウェアが多く出ています。

「コミュニケーション能力」だけを評価したりもします、、、、

多分、違いますよね?