louribot’s blog

学習成果の出る企業内教育(教育全体)についての考察を語ります

「コーピングモデル(coping model)」と「マスタリーモデル(mastery model)」

今回は、”「コーピングモデル(coping model)」と「マスタリーモデル(mastery model)」” というテーマで少し考えてみます。

コーピングモデル(coping model)

コーピングとは、ストレスに対処するための意識的な思考や行動のことですね?

 

教育・学習の分野で有名になったのは、デイル・シャンクらが自己調整学習(self-regulated learning)における文脈で、学習者が学習過程での困難やストレスが学習成果にどう影響するか、、、などを考えたことからです。

 

(コーピングモデル:coping model)

 

学習者がどのようにして学習目標を達成するためにストレスや困難を乗り越えるかを理解するために用いられる。


・評価(Appraisal)

学習者が直面する状況をどのように評価するか。課題が自分にとってどれほどのストレスを引き起こすか、またはその課題が自分の学習目標にどのように影響するかを評価。


・コーピング戦略(Coping Strategies)

学習者がストレスや困難に対処するために取る具体的な行動や思考のパターン。問題解決型の戦略や感情中心の戦略など。


・適応(Adaptation)

コーピング戦略の効果を評価し、その結果に基づいて戦略を調整するプロセス。学習者は、特定の戦略がうまく機能しているかどうかを判断し、必要に応じてアプローチを変更する。


柔軟かつ適応的に対応できることが求められ、自分自身の感情や行動を管理し、学習目標に向かって前進するための最適な戦略を見つける能力。

教育心理学や学習科学の分野で広く研究されており、教師や教育者が学生のストレス管理能力を向上させるための支援を行う際にも重要なツール。


(例)
 
期末試験前に多くの課題と試験に直面している状況。


1. 評価(Appraisal)

 

期末試験のプレッシャーと多くの課題をどのように評価するかを考える。

・試験の重要性:この試験が学期の成績に大きな影響を与える。

・時間の制約:試験までの時間が非常に限られている。

・自分の準備状況:まだ全ての内容を十分に理解していない。


2. コーピング戦略(Coping Strategies)


>問題焦点型コーピング(Problem-Focused Coping)


・計画とスケジューリング

試験までの時間を効率的に使うために、詳細な勉強スケジュールを作成。どの科目をいつ勉強するか、どの課題をいつ提出するかを具体的に計画。


・リソースの活用

教授や同級生に質問をし、理解が不十分な部分を補うためのサポートを求める。


>情動焦点型コーピング(Emotion-Focused Coping)


・リラクゼーションテクニック

ストレスを軽減するために、深呼吸や瞑想、軽い運動を取り入れる。


・肯定的な自己対話

「自分ならできる」「これまでにも困難を乗り越えてきた」といった肯定的な自己対話を行い、モチベーションを維持する。


3. 適応(Adaptation)


・スケジューリングの効果

計画通りに進められているか、どの科目の勉強が遅れているかを確認。


・ストレスレベルの確認

ラクゼーションテクニックがストレス軽減に役立っているか、自分の感情状態をモニタリング。スケジュールがうまく機能していない場合は、スケジュールを再調整し、優先度を再評価。ストレスが依然として高い場合は、より多くのリラクゼーションテクニックを取り入れる。


というようなことです。


一方、マスタリーモデル(mastery model)は、

 

最初から高いスキルを示し、有能にふるまうモデル。学習速度が速く、誤りをしない。

正しく問題を解き、自己効力感と能力の高さ、課題が困難ではないこと、積極的な態度などを反映するモデル。

 

というようなことで、不安やストレスを感じさせないことが学習成果に結びつく、、、というようなことです(?)。


これは、ブルームでおなじみの「完全習得学習(マスタリーラーニング)」似て非なるもので、精神的な面のモデルだと思います。


シャンクらの実験は、ストレスがあるような状況で、そのストレスを克服することにより学習が進み、メタ認知 の能力や、劣等感の克服を目指した(?) ” コーピングモデル ”と、ストレスレスな環境での学習という ” マスタリーモデル との差を出そうとした研究であったと思いますが、・・・。


メンタルという個人によって全てが違ってくるモノへの方略は非常に難しいように思いますが、それが心理学なのだから仕方がありません、、、。


ストレス管理や、アンガーマネージメントなどの精神・マインド系は、” 機械ではない ” 人間にとっては必然の内容なので、心理学になる前の哲学でもずっと語られてきたことですが、それ故、いまだにそういったことは” 科学” なのか、” 哲学 ” なのか? と疑問に思う人たちがいます。


「教育・学習」の理論モデルインストラクショナルデザインなども「哲学」だと考える人たちによって潰されてきた歴史もあります(私自身がARCSモデルを信用できないというのは、「哲学」だと思っているわけはなく、企業内教育特有の状況(学ぶことは仕事)では、、、と思っているからです)。


しかし、認知心理学認知科学などを少しでも学ぶと、「哲学」とはかなりかけ離れた状況にあると理解できます。

 

AI がどうのこうのと言っている今の時代だからではなく、人間が存在するかぎりメンタル・マインド・心理・精神・理性・倫理といったことは、永遠に語られるのだとは思います、、、。

 

そんな中で、「コーピングモデル(coping model)」というのは、わりと面白い考えだと思うのです。

それがいいとか、正しいとかいうことではなく、わりと面白いなぁと。