今回は、” ギターのネックを学習意思だとすると ~ トラスロッドの回し方 ~ ” というテーマで考えてみます。
” 学習者の「学習意思」は、ギターのネックに似ています ”
と言われても、ギターを持っていない人にとっては「何のこと?」となると思います。
簡単に説明しますと、余程古い時代のギターや、クラシックギター、フラメンコギター以外(アコースティックギター、エレキギター)のネックの内部には「トラスロッド」という ” 金属の棒 ” が入っています。
ギターのネックは木製であることがほとんどですから、使っているうちに様々な原因により必然的に“ 反ってきます ” 。
その ” 反り ” を調整して、できるだけ真直ぐな状態に保つ機能をもった金属の棒がトラスロッドです。
学習者の「学習意思」もギターのネック同様に、常に真直ぐであることはありません。
学習意思が過剰になることもあるでしょうし、全く学習する気持ちになれない場合もあります。そして、多くの学習者は、そういったことを繰り返していくわけです。
学習意思が過剰になっている時には、「少しペースを落とそう」
学習する気持ちになれない時には、「この本は面白いよ」
といった風に ” 調整 ” する必要があるわけです。
そして、その ” 調整 ” のことを「教育」と呼びます。
どうでしょう? 言いたいことが少しわかっていただけたでしょうか?
では、トラスロッドについて、
(トラスロッド)
ギターネックのほぼ全長にわたって埋め込まれている棒状の金属製の部品で、ネックの反りを調整する。 トラスロッドの片側に付いているトラスロッドナットをレンチ等で回すことでトラスロッド自体が反り、それによってネックの反りも調整できるようになっている。
(ネックが反る原因)
・弦の張力
ギターの弦は常にネックに一定の張力をかけており、これが原因でネックは自然と順反りになりやすくなる。
・湿度
ギターは木製であるため、湿度の変化に敏感で変化をおこす。
湿気が多すぎると木材が膨張し、反対に乾燥が進むと収縮する。これらの変化は、ネックの反りや変形を引き起こす主な原因の一つ。湿度が50%を超える高湿環境や30%未満の乾燥環境は、ネックの反りが起きやすくなる。
・温度
温度は湿度と同様に、ギターのネックに影響を与える重要な要素。
ギターの理想の温度は20~25℃で、この範囲を超える急な温度変化はネックに悪影響を及ぼす可能性がある。
・その他外的な要因
ギターのネック反りは不適切な保管方法からも生じる。
長期間壁に立てかけて保管すると、ネックに不要な圧力がかかって反りの原因になる。
ということです。
人間もギターもよく似ていると思いませんか?
様々なプレッシャーやストレス、環境により人間の意志は変化していきます。
学習者の意思を調整するのに ” ベスト ” ということはまずありません。” ベター ” をめざします。
ギターのネック調整も ” ベスト ” ではなく ” ベター ” をめざして調整します。通常は、弦を張り、音程を合わせた状態(チューニング)、つまり演奏する時の状態で、若干 ” 順反り ” しているくらいになっています。
” 逆反り ” になると押さえているところ以外の弦がフレットに接触して ” ビビリ音 ” がでるからです。
通常のトラスロッドは、一方向、つまり弦に引っ張られて ” 順反り ” になっているネックを ” 逆反り(方向:トラスロッドが真直ぐになるまで) ” に戻す機能しかありません(双方向のトラスロッドもあるにはありますが、あまり多くはありません)。
ここで考えてみると、
「順反り」=「学習意思低下」
「逆反り」=「学習意思過剰」
ということと似ています。
ギターも学習者も、圧倒的に、「順反り」=「学習意思低下」になる場合が多いわけです。
そのために、トラスロッドは一方向にしか対応していないわけです。
これは、昔は作成の技術的問題もあったのでしょうが、統計的、経験的に現在でも仕様を変えずにあるということでしょう。
学習意思に対する調整である「教育」も同様に、
いかに低下した学習意思を元に戻せるか?
という方略、メソッド、モデル、理論がほとんどです。
それはそうです、たとえ「学習意思過剰」になっても、「そんなに勉強しなくても・・・」という「教育」は少ないですね(認知負荷についての考えは多くありますが、学習意思過剰についてはほとんど聞いたことがありません)?
ギターの機能について興味をもった人は、トラスロッドについても学んで、自分でネックの調整をします。
これは「自己調整学習」と考えてもいいかもしれません。
しかし、いい加減な知識でトラスロッドを回して、ネットを折ってしまうということも少なくありません。
トラスロッドでのネック調整というのは、個体にもよりますし、ギターにもよるので非常に微妙で、繊細なモノなのです。
不安な場合は、楽器屋やリペアーショップで調整してもらえば、ほとんどそのようなことにはなりません。
学習意思低下についての「教育」は、教育・学習の理論等をいい加減に学んで行うものがほとんであり、先生、教師、講師、教育担当と肩書はあっても、ちゃんと「教育」について学び、学習者のサポートをできる人というのは1割もいないのではないかというのが実感です(個人的なデータでは、、)。
ギターのリペアーを行う人は、ギター制作、メンテナンス、リペアーの「専門学校」に通って知識・スキルを身につけた人がほとんどです(中には経験だけでやってるアブナイ業者もありますが)。
しかし、日本では現在、
”「真正な教育・学習」について学べる学校 ”
などはありません(2023年にゼロになりました)から、自分で様々な情報を集め、論文、書籍で学び、習得するしか方法はありません。
大学の教育学部や企業研修業者が、いい加減な知識を元に非常にいい加減な ” 調整 ” を行っていることが原因で、
ネック(学習意思)が折れてしまったギター(学習者)がどれほどいることか?
と考えると悲しくなりますね。